戦争と平和、そして無記

国際政治や歴史、およびその根底にある人類の心のメカニズムについて考察していきます。

第四回 アメリカの大統領が暗殺されるパターン

 第一次世界大戦がはじまる前年の1913年、FRB(Federal Reserve System 連邦準備制度)ができる。なぜアメリ中央銀行が「連邦準備制度」というわけのわからない名前になったかと言うと、先日紹介した安部氏の本(「世界超恐慌の正体」普遊舎新書)によれば、ポール・ウォーバーグがわざとそういう意味不明な名前の銀行にしたそうである。
 アメリカ国内にはアメリカの通貨発行権を銀行に渡すことに反発する人々が歴史上根強くいて、アメリ中央銀行という名称は、とてもじゃないが使えなかったそうである。考えてみれば、確かにそうである。通貨はアメリカ政府、つまり財務省が発行すればいいわけで、実際、FRBができるまでは、そうしてきた。アメリカ政府は、1913年まで、その牙城を守ってきたのである。
 しかし、ロスチャイルドなどの資本家勢力の長年の努力のかいがあって、1913年、ポール・ウォーバーグが中心となってFRBができた。この時、ウッドロウ・ウィルソン大統領が署名を拒否していたら、彼は確実に殺されていただろうと私は思う。なぜなら、ウィルソン大統領政権の副大統領はトーマス・ライリー・マーシャル(Thomas Riley Marshall, 1854年3月14日 - 1925年6月1日)であり、彼はフリーメイソンだからだ。もし、ウィルソンがFRB設立を拒否していたら、ウィルソンは殺処分され、フリーメイソンのマーシャルが大統領に昇格というお決まりのパターンだったと思う。
 御存知の通り、アメリカの場合、御本尊のジョージ・ワシントン(1732-1799)自体がフリーメイソンである。アメリカ歴代大統領45人のうち、フリーメイソンの大統領は19人である。また、マーシャルのような副大統領も入れれば、フリーメイソンの人数は膨大なものとなる。第二次世界大戦を始めたフランクリン・ルーズベルト、日本に原爆を落として第二次世界大戦を終わらせたハリー・トルーマンフリーメイソンである。
ウッドロウ・ウィルソンフリーメイソンではなかったが、側近の言うことに逆らわない人物だったから、殺されなかったようだ。実際、彼はまわりにいる連中の助言にまったく逆らわず、FRBを設立し、第一次世界大戦アメリカを参戦させ、終戦後は国際連盟を提唱している。これらは全部、まわりの連中の言いなりになってやったことだと思っていいだろう。
 言いなりにならなかった人物で、かつフリーメイソンでもなかった大統領が、リンカーンケネディである。この二人は無謀にも、ロスチャイルドなどの金融資本家に歯向かった。アメリカ史上、在任中に殺された大統領は、リンカーンケネディである。この二人は両方ともフリーメイソンではない。かつ、通貨発行権の民営化に反対した。そうなると、ニコライ二世と同じく、邪魔者として処理されることになるだろう。
 ジョンソンという名前の大統領は、アメリカの歴史において二人いる。一人が第17代大統領であるアンドリュー・ジョンソン(1808-1875)であり、もう一人が第36代大統領であるリンドン・ジョンソン(1908-1973)である。両方とも副大統領となり、大統領が暗殺され、ナンバー2からナンバー1に昇格している。アンドリューはリンカーン政権の副大統領であり、リンドンはケネディ政権の副大統領であり、ジョンソンは両方ともフリーメイソンであった。
 リンカーン南北戦争の資金として、ロスチャイルドから金利36パーセントの高利の資金提供の申し出を受けたが、これを断った。政府がグリーンバックという紙幣を発行し、これを戦費とすることで、金融勢力と手を切ったのである。バック(buck)とはドル(dollar)のことであり、現在のアメリカでも、ドルはバックと言われることが多いようだ。グリーン(Green)なのは、紙幣の裏側が緑色で印刷されたからである。従来のドル紙幣が黒で印刷され、戦時に新たに印刷された紙幣は裏側が緑色で印刷されたわけである。黒で印刷されようが、緑で印刷されようが、両方とも同じ価値のドル紙幣なので、市場では両方とも同じものとして使われた。
ロスチャイルドは当然これに怒った。戦争という巨大な金食い虫の資金を提供することがロスチャイルドの仕事なのだから、仕事を奪われたロスチャイルドからすれば、金貸しに頼らないリンカーンは許せない。リンカーンはその怒りに油を注ぐように、南北戦争の終了後もこれを永続的な通貨システムとすると発表した。その発表の一か月後、彼は暗殺された。
 ケネディFRB通貨発行権を政府に取り戻すという大統領令11110号に署名した後に暗殺された。両方とも、頭のうしろを拳銃でうたれて殺されたのである。結局、両者ともに通貨発行権を政府のものにすると発表した直後に殺されているのだが、公式には狂信的な男による単独犯ということになっている。
 なので、フリーメイソンでないウィルソンが大統領になった時に、フリーメイソンであるトーマス・マーシャルが副大統領になっているという事実は、偶然とは考えにくい。逆らう大統領は始末して、フリーメイソンの副大統領を大統領に昇格するというのがおきまりのパターンなのだろうと思う。この点、ウィルソンはFRB設立の際はポール・ウォーバーグの言いなりとなり、第一次大戦後のパリ講和会議ではモルガン商会のモルガンやラモントの言いなりとなった。おそらく、それゆえに彼は殺されずに済んだのだろう。