戦争と平和、そして無記

国際政治や歴史、およびその根底にある人類の心のメカニズムについて考察していきます。

第六回 国際的リサイクルシステム

 ヴァールブルク家はロスチャイルドと関係の深いユダヤ系ドイツ人の家柄である。その家の出身であるマックス・ヴァールブルク(英語読みはマックス・ウォーバーグ Max Warburg、1867年6月5日 - 1946年12月26日)は、金融資本家であり、ナチスを早い段階から資金援助し、育てた。ヒトラーゲッペルスルドルフ・ヘスといった優秀な20代、30代の若者を資金援助して育てるというパターンは、明治維新ロシア革命と似たようなパターンである。

 つまり、ユダヤ人を迫害するナチスを、ユダヤ人であるロスチャイルド系の資本が援助していたのである。なお、マックス・ヴァールブルグの弟は、アメリカでFRB創設のためにウィルソン大統領に署名させたポール・ウォーバーグ(1868-1932)である。つまり、兄はドイツでナチスを育て、弟はアメリカでFRBをつくったのである。

 ヴァールブルグ家はシフ家とも関係が深い。ポール・ウォーバーグは、クーン・ローヴ商会設立者のソロモン・ローヴの娘と結婚している。フェリックス・ウォーバーグの妻は、ジェイコブ・シフの娘である。つまり、彼らは親戚関係にあり、ドイツ語、英語、ヘブライ語などの多言語を操り、ヨーロッパとアメリカを行き来する国際人である。

 ナチスドイツとアメリカは後に戦争をするが、その裏にはウォーバーグ兄弟というロスチャイルド系のグローバル金融資本がいたのであるから、第二次世界大戦ロスチャイルド抜きには語れないものである。ウォーバーグの登場以前に、ヨーロッパで活躍したロスチャイルド系の宮廷ユダヤ人が、ゲルゾーン・フォン・ブライヒレーダー(1822-1893)である。彼はドイツで鉄血宰相ビスマルクの財務顧問をしていたが、同時にアメリカのアルバート・パイクにも資金援助をしていた。

 アルバート・パイクが手紙を書いた相手は、イタリア近代化の運動をしていたマッツィーニである。パイク、マッツィーニ、ビスマルクは、普通の歴史の教科書ではバラバラに出てくる人物であり、関係があるようには見えない。パイクはアメリカ人、マッツィーニはイタリア人、ビスマルクはドイツ人で、それぞれが各国の軍人兼政治家として歴史の教科書に登場する。しかし、各人物は、同じ資金源から別の場所で戦争をしていたとも言えるのである。つまり、同じ穴のムジナと言えなくもない。この時代の主な戦争は次のとおりである。

 

 イタリア統一運動、紛争(イタリア:1858年から1861年

 南北戦争アメリカ:1861年から1865年)

 普墺戦争プロイセンオーストリア:1866年)

 第一次キューバ独立戦争キューバ:1868年から1878年

 普仏戦争プロイセン、フランス:1870年から1871年

 西南戦争(薩摩、日本:1877年)

 露土戦争(ロシア、トルコ:1877年から1878年

 スペイン王位継承戦争(スペイン:1701年から1714年)

 

 イタリアの明治維新とも言えるようなイタリア近代化の中心人物がマッツィーニであり、アメリカで南北戦争を担当したのがパイクであり、普墺戦争普仏戦争を行ったのがビスマルクである。彼らは若い頃から優秀であり、共通の源から資金提供を受け、それぞれの活動を行った。つまり、国際金融資本のリサイクルシステムの中で、それぞれの役割を果たしたとも言えるのである。

 例えば、南北戦争が終わって、不要な武器や弾丸や大砲が大量に出る。それを今度はヨーロッパに持っていって、普墺戦争で使うのである。つまり、「お下がり」である。西郷隆盛が中心となってやった西南戦争も、その「お下がり」がまわってきて起きた戦争である。南北戦争アメリカ人を殺した銃が、船で運ばれ、ヨーロッパで使われた後、九州で使われる。

 そういうことをやっていれば、儲かるのは武器商人や金融業者である。これはいつの時代も変わらない。ジャーナリストのヴィクター・ソーン(Victor Thorn 1962-2016)が世界四大金儲けは、戦争、麻薬、エネルギー、金融だと言ったが、当時も今も変わらないのだろう。

 戦争したい国に金を貸して利子を得て儲け、さらに武器をリサイクルして儲ける。現地の人が戦争の仕方を知らない場合は、戦争が終わって暇になった軍人を派遣して、戦争の仕方を教える。人材派遣業もやるのである。例えば、西南戦争の際に、薩摩軍と政府軍の両方に武器の使い方や戦争の仕方を教えたのは、南北戦争が終わって暇になったアメリカの軍人のようである。

 坂本龍馬は、フリーメイソンであるトーマス・グラバー(Thomas Glover 1838-1911)から近代世界のことをいろいろと習った。その際、頭のよい坂本は、この仕組みを見抜いたようである。それゆえ、戦争抜きで日本が統一国家になるように、西郷隆盛らを説得して、薩長江戸幕府をうまくまとめてしまった。これは奇跡的なことだった。しかし、グラバーからすると、坂本龍馬などの幕末日本の優秀な若者を育て、資金提供したのは、日本で派手な内戦をしてもらうためである。戦争をしてもらわなければマセソン商会はちっとも儲からない。それゆえ、怒ったグラバーはヒットマンを用いて坂本龍馬を殺したと言われている。

 平和に日本のサムライたちが近代国家を打ち建てたら、困るのは国際資本家たちである。戦争をするには莫大な金がいるし、武器もいる。そのために国債を発行し、その国債を国際金融資本が買い、日本人はその金で国際金融資本から武器を買うという構図でないと、青い目をした人達からすると困るのだ。有色人種が白人の銀行家から金を借り、その借りた金で同じ白人から武器を買って、内輪揉めの戦争をする。戦争が終わったら、白人がその武器を無料で回収し、また別の場所で別のターゲットに金を貸して、そいつに武器を買わせる。そういうリサイクルシステムなのである。

 現在の世界銀行というのは、そのためにある銀行とも言えよう。なので、IMFの幹部だった人物が、転任して世界銀行の幹部になり、その後ゴールドマン・サックスの取締役をやり、FRBの理事になったり、イスラエル銀行の幹部になったり、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授になったりする。東大を出て東京電力に就職した人物が、その後経産省の官僚になり、さらにその後、東大の原子力工学の教授になることと同じである。人材のリサイクルシステムである。

 例えば、イラクサダム・フセインは、若い頃にアメリカから莫大な資金援助を受けて、育てられた。彼は政権を取った後、アメリカからの軍事援助をもとに独裁政権を強め、イラン・イラク戦争(1980-1988)を行った。しかし、力をつけたフセインは、石油利権をアメリカに渡さず、中央銀行の民営化を行わなかった。その後、彼はアメリカ軍によって処分され、イラクの石油利権はアメリカ企業を中心とするグローバル企業に握られ、中央銀行も民営化されている。

 アフガニスタンも同じである。アメリカに占領された後のアフガニスタンは天然資源を全てアメリカに押さえられ、中央銀行も民営化されている。アフガニスタンでは、アメリカ占領後に麻薬の生産量が激増したそうである。やはり、この世界の支配者の目的は、エネルギーと中央銀行、そして麻薬の奪取であり、それを武器のリサイクルで行うことである。エネルギー、金融、麻薬、戦争が、やはり人類の四大産業なのであり、そのリサイクルシステムの中でくるくるまわりながら出世する人物が、世の中の勝ち組になっていくのかもしれない。