戦争と平和、そして無記

国際政治や歴史、およびその根底にある人類の心のメカニズムについて考察していきます。

第二十九回 CSIS、その歴史と日本との関係(7)

1.植民地における「四方良し」の構造

 有色人種を戦争で打ち負かし、奪い取った領土から利益を搾り取るために、およそ500年にわたって研究を重ねてきた人達がいる。彼らにとって、植民地支配は国家の基幹事業である。しかし、私がそれを「悪」だと言って非難しても、世界は何も変わらない。このブログの目的は、隠された「悪」を告発することではない。事実を知ることによって自分自身の物の見方を変えることが目的である。

 相手を非難することは非生産的であるが、相手を知ることは生産的である。彼らの思考様式がわかれば、我々のような平和ボケの日本人であっても、日常のニュースをまったく違ったものとして見ることができるようになる。軍事と学問と市民生活は、深い関係にある。この観点を基準点として、日常のニュースを読み解けばいい。

 そのスコープから見えてくるものは、この日本という国も、いつの間にか軍産複合体に組み込まれているという事実である。例えば、四国の田舎に、官邸の肝いりで農獣医系の大学が新設される。日本のマスコミは右も左も官邸の味方であるから、頓珍漢な論点で騒ぎ立てる。つまり、総理大臣のお友達を税金で優遇するのかという問題で騒ぎ立てるのだ。

 これは明らかにトリックである。日本においては、毛細血管にいたるまでCIAが入り込んでいる。ある新聞記者が病気で入院したら、CIAの人がお見舞いに来るわけである。となると、大手マスコミが本当のことを書くはずがない。しかし、何も書かないのでは仕事にならない。それゆえ、本題とは別のところを論点にして騒ぎ立てる。そうやって、国民に本題が見えないようにする。これがプロのマスコミの仕事である。

 見えにくい本題は、政府と軍事と学術研究の深い関係である。つまり、あえて人口の少ない地域にバイオ関係の研究施設を新設するわけである。となれば、話の筋は見えてくる。生物兵器の開発である。つまり、フォート・デトリック(Fort Detrick)の下請け的な仕事である。最先端の生物兵器は、甚大な殺傷力を持つので、万が一漏れた場合のことを考えると、人口の少ない地域でなければ困るわけだ。

 そう考えると、問題はお友達行政よりもセキュリティである。最先端の生物兵器がそこにあるとなれば、それを欲しがるテロリストは世界中にいる。果たして、四国の学園の横には、それをガードするための自衛隊の基地はあるだろうか。これは東京都武蔵村山市の感染研でも同じことである。エボラ関係のウィルス兵器を、どこかの国の手練れの軍人が盗みに来た時、警備員や警察官で対処できるはずがない。

 しかし、自衛隊による物々しい警備をしてしまうと、市民に怪しまれてしまう。そこで、官僚はいつもの得意技で対処する。すなわち、「事故は起こらない」という信仰を持つのだ。この信仰は思考停止である。マスコミも含め、皆でこのことを考えないようにする。戦前から現在にまで続く日本人の伝統芸である。

 

高致死率ウイルス初輸入へ 今夏にもエボラなど 感染研「了承」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019053102000141.html

 

 この記事は、感染研に危険なウイルスが入ってくる理由を、「東京五輪パラリンピックを踏まえ、多様な国の人が集まり感染症が持ち込まれる可能性に対処するため」と述べている。しかし、それは政府発表を九官鳥のようにそのまま言っているだけである。真実を知りたい人からすれば、その政府発表が果たして本当であるかをジャーナリストに調べてもらいたいわけである。

 もちろん、感染症対策としてウイルス研究をするというのは本当であろう。しかし、研究所と軍事力の深い関係という視点からすれば、それだけの理由で大量の税金が動くとは思えない。政府発表は嘘ではないが、氷山の一角しか言っていないはずである。そして、ベテラン記者なら、そのことに気づいているはずである。

 しかし、日本の場合はこれでいいのだろう。宗主国からすれば、植民地の奴隷たちが軍事情報について知る必要はない。政府からすれば、政府が憲法違反をしていることを国民が知る必要はない。新聞記者からすれば、余計なことを言って左遷されるよりも、つまらない記事を書いて年収1000万を確保する方がいい。国民からすれば、恐いことは知りたくないので知る必要はない。

 これはまさに「三方良し」ならぬ「四方良し」である。「良し」と言っても、日本国民にとって「良い」わけではなく、支配者にとって「良い」わけである。しかし、宗主国にとって都合の「良い」体制を下支えしているものは、国民の「知りたくない」という心情である。これがわかると、支配者と奴隷の共犯関係が見えてくる。

 

2.国民の思考停止が植民地経営を下支えする

 戦前において、真っ当な精神の日本人は「この戦争、負けだな」と心の中で確信していた。しかし、それを口に出して言うことは、治安維持法違反の疑いがあり、逮捕される可能性があった。戦後、治安維持法はなくなったが、この伝統芸自体は続いている。例えば、熊本県の内科医、小野俊一さんは、東京電力の社員の信仰心について著書(「フクシマの真実と内部被曝」七桃舎)の中で述べている。

 彼は医師になる前は東京電力で働いていた。小野さんは、東京大学を卒業後、東電に就職した。若い時の彼は、まだ日本の伝統芸を十分に理解していなかったのだろう。放射性廃棄物を1000年間どうやって東電が管理するのか。そういう真っ当な疑問を持ったわけである。しかし、そういう疑問を持った若手達を、当時原子力技術課長であった武藤栄氏は一喝したそうである。「東電がきちんと管理すると言っているのになぜ納得しないんだ!納得しないのはおかしい!」

 日本社会においては、疑問を持たずに黙々と働くことが推奨される。だから、戦前の日本では「こんなことやってても負けるんじゃないか」とか「竹やりの訓練は何のためにやるんだろう」とか考えずに、ただ言われたことを黙々とやることが求められた。

 戦後の日本でも基本的に同じであり、「こんなズサンな施設だと、いつか大変なことになるのではないか」とか「1000年間放射性物質を管理するってどうやってやるんだろう」とか考えずに、ただ黙々と上からの命令を実行することが大事なのである。小野さんは後に東電を辞めるが、武藤さんはその美徳を貫き、篤い信仰心によって東電の副社長になった。

 これは四国のバイオ大学や武蔵村山市のバイオ研究所の件でも同じである。「バイオ施設がテロリストに襲われたらどうしよう」とか、「そもそも軍事用の生物兵器の開発って憲法違反じゃないのかな」とか、余計なことを考えることは、この社会では推奨されない。

 余計なことを考えずに、黙って目の前の業務をこなす。こうした日本人の美徳と信仰心は、植民地経営に大いに役に立っている。宗主国と植民地との一心同体の関係は、真実を知らせたくないという宗主国と、余計なことを考えずに、ただ黙々と目の前の仕事をこなしていきたいという植民地との絶妙な関係により成り立っている。

 アメリカの植民地は日本だけではないが、日米関係ほど穏やかにうまくいっている関係はない。それは、信じさせたい支配者と、信じたい奴隷との間の蜜月関係である。この蜜月を維持するための人材が、この国では出世する。余計なことを考える人間は出世しない。

 それは、宗主国から求められていないという理由だけではない。奴隷の間でも、そんな人物は求められていないのだ。奴隷は真面目に目の前の仕事を黙々とこなし、仕事が終わったら家に帰って小さな幸せを満喫する。そういった箱庭の幸せをかき乱す人間は、この国では求められていないのだ。

 この構造が植民地支配を下支えしている。それは、アメリカが暴力で日本を支配している構造ではなく、日本人が大きなものを信じたいという気持ちを強く持っていることから成り立っている構造である。信じたい国民は、信じたい政治家を選ぶ。国を信じたい国民は、アメリカを信じたい政治家を選ぶのだ。そのため、洗脳された政治家を国家のリーダーに選んでしまうのである。

 

3.蜜月という犬舎の愛玩犬

 現在の日本の政治家で、若手のホープは、何と言っても小泉進次郎(1981-)であろう。古い政治家たちの出世コースは、CIAの申し子になることであったが、新しい世代の政治家の出世コースは、CSISの申し子となることである。現在38歳の彼は、恐らく、40代のうちに総理の椅子に座るだろう。

 彼は、関東学院大学を卒業後、ジェラルド・カーティス(Gerald Curtis 1940-)の手引きでコロンビア大学に留学している。その後、CSISで洗脳教育を受けている。彼の教育係がジョンズ・ホプキンス大学出身のマイケル・グリーン(Michael Green 1961-)である。彼は元NSC(United States National Security Council)のアジア担当であり、東京大学に留学経験もあり、日本語に堪能である。CFRの研究員やジョージタウン大学の准教授を務め、現在はCSISの副理事長である。

 つまり、マイケル・グリーンは日本支配のスペシャリストであり、日本人よりも日本人の弱点をよく知っている。日本人は強欲でなく、質素倹約で満足するが、小さな幸せに対する執着心は物凄く強い。そのため、大きなものを必死になって信じようとする。それが日本人の弱点だ。それゆえ、アメリカは常に日本を脅しつつ、その強さと大きさを見せて、この懐に入れば安心だと言い続ければいい。不安と安心の飴と鞭を使い続ければいいのである。

 そういう日本支配のスペシャリストと小泉進次郎では、植民地支配に関する知力の点で、とてつもない差がある。その差はザビエルとヤジロウの差よりも大きく、キッシンジャーと中曽根の差よりも大きいだろう。その点では、小泉があっけなくCSISで洗脳されてしまったとしても、致し方ないと言える。グリーンからすれば、小泉はいつまでも「かわいい」忠犬である。

 

小泉進次郎の覚悟「国会では友人はできない」 - FNN.jpプライム

https://www.fnn.jp/posts/00338310HDK

 

 戦後、GHQは優秀な忠犬を探し、岸信介を見出した。その後、キッシンジャーは中曽根を教育した。そして20世紀、CSISマイケル・グリーン小泉進次郎を教育した。戦後70年以上が経っても、日米のこうした主従関係はまったく変わっていない。アメリカという巨漢の主人の足元で、子犬は安心して夢を見るのである。

 ただ、時が経つにつれ、蜜月の在り方も変わった。忠犬の知力は時が進むにつれ、低下する。昔と違い、ヤジロウは必ずしも優秀である必要はなくなった。岸信介中曽根康弘小泉進次郎というように、その知力は階段を転がり落ちるように劣化した。かつての忠犬は主人の悪巧みと共謀する狡猾な犬だったが、時が経ち、主人を信じる「かわいい」忠犬となってしまった。

 岸信介は「昭和の妖怪」と呼ばれた鋭い頭脳を持つ軍用犬であったが、小泉進次郎はそれに比べれば愛玩犬でしかない。シェパードとポメラニアンくらいの違いがある。しかし、現在求められている総理大臣の資質はそんなものなのかもしれない。失言しない程度の知力があればいい。国民の人気があり、血統がよく、見た目がいいならば、忠犬はそれほど優秀でなくていい。その点では、これはこれで、コロンビア大学CSISというアメリカの軍事的Intelligenceの傑作と言えるのだろう。

 

小泉進次郎という政治家を徹底分析してみる

https://toyokeizai.net/articles/-/291310?page=2