戦争と平和、そして無記

国際政治や歴史、およびその根底にある人類の心のメカニズムについて考察していきます。

第百六回 新型コロナワクチンと大出血(4)

1.説明書から読み取れる「わからなさ」

 新型コロナウイルス用ワクチン(正確にはコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)の接種が、我が国においても着々と進んでいる。2021年6月13日の時点では、医療従事者や高齢者への接種が優先されている状況であるが、今月中旬から一般接種もスタートすると政府は発表している。

 

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  問題は、誰もが気になる安全性である。この点、我々が抱く懸念事項の数々は、ワクチンに対する素人的な誤解に基づくものであると、第一線で活躍する医師や研究者たちが述べている。つまり、我々のワクチンに対する心配は取り越し苦労であるというわけである(詳しくは前回のブログ参照)。

 だが、ここには決定的な事実がある。確かに研究者たちは、我々の非科学的な愚問に対して科学的研究成果の立場から対応し、「それは誤解だ」とか「心配ない」というふうに答える。しかし、彼らは絶対に「安全だ」とは言わない。なぜなら、このワクチンを作った製薬会社が長期安定性については「わからない」とはっきり言っているからである。

 

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コミナティ筋注 コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン

 

 「本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において長期安定性に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集中である。」

 

 説明書の文章をきちんと読めば、このワクチンがある種の博打であることは明確にわかる。このワクチンは特例承認されたものである。つまり、普通なら厚労省で承認されることはあり得ないということである。緊急事態であるゆえに、本来必要とされる治験等は省略して、特別に承認されたものである。

 だから「長期安定性」、つまり接種した人が将来どうなるのかについては、作り手である製薬会社にもわからない。情報がない。だから接種と同時進行で情報収集し、検討している最中である。つまり、会社としては責任が持てないということである。あくまでも自己責任なのだ。

 

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク

 

 「また、有害事象が認められた際には、必要に応じて予防接種法に基づく副反応疑い報告制度等に基づき報告すること。」

 

 普通、ワクチンの承認には5年程度はかかるものである。その間、治験等で有害事象を把握し、その後で承認という段取りとなっている。ところがこのワクチンの場合は順番が逆であり、特例承認を取ってから有害事象の報告と検討がなされることとなる。要は大規模な人体実験である。

 普通のプロセスなら、研究開発に莫大な費用がかかり、苦労の末にワクチンが完成してもその後の治験にまた金と時間が費やされる。売上として会社に収入が入るのはその後である。だから投資のリターンが返ってくるのは相当後の話だ。投資家は5~10年、あるいはそれ以上待たなければならない。

 ところが、今回のようなスピード承認なら、あっという間にリターンが投資家の手に入ってくる。治験費用も無料である。大規模人体実験の後、報告も無料で多数やって来る。大量データの取り込み費用がゼロというのは、会社としては大きな利益である。

 しかも、後々問題が起きた場合の損害賠償費用も無料である。これも普通ではありえない措置である。通常なら、訴訟リスクは会社が負う。それは安全性に疑問がある製品を市場に流通させた会社の責任である。ところが今回のワクチンは製薬会社にとってノーリスクである。

 

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  これは製薬会社にとって過去例を見ないほどに「おいしい」話である。コロナ禍は製薬会社と投資家にとって、普通ならあり得ない巨額の利益をもたらした。支払は全額我々の税金である。もちろん、多額の出費があっても、ワクチンの安全性が確立されているなら、まだいいだろう。だが、このワクチンが安全かどうかは、今はまだ誰にもわからない。

 

2.ADEについて口を閉ざす

 医師や研究者、つまりプロなら誰でも、この説明書を読んでいるはずである。だが、推進派のプロはこれについて言及しない。また、彼らは「抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement 略してADE)」についても言及しない。プロなら皆、ワクチン接種にはADEのリスクがあることは知っているはずである。

 今回のウイルスはSARSコロナウイルス2(Severe acute respiratory syndorome coronavirus 2)という名前のウイルスであるが、これと祖先を同じくするウイルスが2003年に中国で猛威を振るったSARSコロナウイルス(Severe acute respiratory syndorome coronavirus)である。

 このSARSウイルスについての動物実験においてADEが発生したと見られている。フェレットなどの哺乳動物にワクチンを投与した後、SARSウイルスに感染させた。理論的にはワクチンを打っている以上、動物の体内に抗体ができており、ウイルスに感染しても重症化しないはずである。

 ところが結果は逆であり、重症化した。これはワクチンによって体内に抗体ができなかったからではない。むしろ、できた抗体が免疫細胞等へのウイルスの感染を促進したためだと考えられている。ウイルスに感染した免疫細胞が暴走すると、本来なら細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫細胞が普通細胞を攻撃してしまうのだ。

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ウイルス研究用のフェレット 主に中国で生産されている

 

実験動物用フェレットのご提供について|日本クレア株式会社

 

 つまり、ワクチンによってできた抗体が逆説的に重症化を招くのである。ADEによって死亡したフェレットは、もしかしたらワクチンを打たなければ、SARSに感染しても死亡しなかったかもしれない。SARSに感染しても、必ずしも重症化するわけではない。免疫系が正常に働けば、自然治癒する可能性がある。だが、ADEによって免疫系が正常性を失えば、SARS感染が引き金となって免疫系は暴走する。

 大阪大学の宮坂先生は昨年の夏、性急に開発されたワクチンを国民が大量接種してしまえば、ADEのリスクを人体実験することになると述べている。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

  ADEのリスクは、どんなワクチンであろうが消すことはできない。現代の科学水準ではまだそのメカニズムの全貌が解明されていないからだ。だからワクチンの承認には普通5年はかかるのだ。もちろん、製薬会社や投資家からすれば、その5年はマイナスであり、巨大な出費である。

 だから、彼らからすれば先に販売と大量接種を済ませ、その後に経過観察をするというプロセスは最高であろう。本来なら自分たちの出費として行う治験を国民の税金によって成し遂げられるわけであるし、これだけの大量データ取得は普通の治験では不可能である。

 こうした巨大利権と一心同体である政府や大メディアは、ADEについて言及しない。そこに群がる御用学者たちも口を閉ざす。彼らは嘘は言わない。だが肝心なことは隠す。逆に、そうしたリスク、つまりまだ「わからない」ことについて明確に述べる学者は、推進派の学者よりも信頼できるだろう。「わからない」ことを「わからない」とはっきり述べることは、学者の良心であると言える。

 

www.fnn.jp

 

3.良心を忘れた御用学者がワンパターンで使う手法

 推進派の学者からすれば、素人の低レベルな質問に対して対抗することは容易である。例えば、「遺伝子ワクチンを接種したら我々の遺伝子は組み替えられてしまうのか?」とか、「急造ワクチンで大丈夫なのか?」とか、「アナフィラキシーショックが起こるのではないか?」といった質問である(詳しくは前回のブログ参照)。

 こうした質問、つまり素人が頭に思い浮かべやすい懸念事項については、既に推進派の方で回答が用意されている。彼らからすればそれを答えればいいのであるから、簡単である。国民のネガティブな反応を払拭したい大メディアからしても、マニュアル通りの質問と回答をニュース番組で流せばいいだけであるし、場合によっては推進派の医者や学者を出演させて喋らせればよいので簡単だ。

 つまり彼らからすれば、我々国民を「手懐ける」ことは極めて簡単なのである。民主主義国家では政府による思想統制言論統制憲法違反であるから、国家が国民を管理することは全体主義国家よりも難しいように見える。

 だが民主主義国家では国民を「手懐ける」ためのIntelligenceの蓄積がある。それを民間の学者やマスコミにアウトソーシングすればいい。民間がやるなら憲法違反ではない。これが憲法という法律の抜け穴であり、そこには様々な手練手管がある。

 その代表的な手法の一つが、国民にどうでもいい情報を大量に与え、肝心な情報を隠すという手法である。例えば、東大話法の達人である大橋先生である。先生は「原発説明会」という名前の洗脳会において、原発建設予定地の地元住民に対して、繰り返しこの手法を用いて洗脳をした。

 それが有名な「プルトニウムは飲んでも平気」という話である。先生は高名な学者であるから嘘をついて住民を騙すわけにはいかない。そのため嘘で騙すのではなく、「事実で騙す」のである。実際、プルトニウムは胃腸で吸収されないので、先生の言う「飲んでも平気」は嘘ではない。事実である。

 だが、これによって住民たちはプルトニウム、およびそれを製造する原発に対して安心感を持ってしまう。「飲んでも平気」という「どうでもいい情報」を餌として撒き散らすことによって、肝心な情報は隠す。

 確かにプルトニウムを水に薄めて飲んでも健康被害は生じないであろう。だが、微量でも鼻や口から肺に入れば、高確率で肺癌を発症する。そのことは大橋先生もよくご存知のはずであるが言及しないのだ。

 

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原発説明会での東京大学大橋弘忠教授(現在は名誉教授)

 

www.mynewsjapan.com

 

 

gendai.ismedia.jp

 

  これは今回のワクチン騒動でも全く同じである。様々な科学的情報が国民に与えられる。例えばワクチンのmRNAは細胞内に入っても一週間程度で消滅するから心配はないという話である。これは科学的に嘘ではないだろう。だが、そういった「重要でない懸念事項」に対する回答で安心感を持ってしまうなら、彼らの思う壺である。彼らは「重要な懸念事項」つまり肝心なことについては口を閉ざす。例えばADEについて言わない。

 実際には、最先端の科学においてもウイルスやワクチンについて「わからない」ことは多い。そうした「わからない」ことについて口を閉ざし、「わかった」ことについてだけペラペラと流暢に話しながら国民を安心させようとする学者については注意が必要である。何か肝心なことを隠そうとしているかもしれないからである。

 

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重要事項が隠蔽される仕組み

 我々は中国や北朝鮮のような情報統制国家の住民ではない。だが、情報は統制されている。それは高度、巧妙、洗練な形で統制されており、ある意味、全体主義国家よりも遥かに厄介である。全体主義国家であれば、ウイルスやワクチンについて国民には何も知らされないであろう。そういう国の住民は、家族がコロナウイルスで死亡しても、風邪が悪化して死んだのだと解釈するかもしれない。

 これに対して自由主義国家では、日々、情報が大量に撒き散らされる。そこでは国民の誰もが評論家であり、コメンテーターである。国民の一人一人が保有する情報量は、全体主義国家の国民とは比較にならない。だが、自由主義国家の住民が頭に入れている情報は、全て金融資本家にとって都合のいいものかもしれない。自由主義国家の住民は、「知らない」ことによって飼い慣らされるのではなく、「知る」ことによって飼い慣らされるのだ。

 結局、このトリックは原発であろうがワクチンであろうが、同じように使われる。なぜ同じ手法が飽きもせず使われるのか。それは我々国民が同じやり方で騙され続けているからである。同じ手法で結果が得られるなら、あえて変える必要はない。だから相も変らぬワンパターンが続くのである。

 我々は原発事故の際には放射能について心配し、コロナ禍においては感染やワクチンについて心配する。しかし、本当に問題なのは放射能やウイルスよりも、何度も同じやり方で騙される我々の思考パターンの方である。これがわからなければ、危機が去った後もまた同じ手法でやられてしまうだろう。

 それゆえ、今回のワクチン騒動も我々にとっては貴重な教訓になりうると思われる。我々にとって本当に必要な学者は、「大丈夫だ!」と言って我々を安心させる学者ではなかろう。科学の未熟さ、人間の知性の未熟さを素直に認め、「わからない」ものについては「わからない」と正直に述べる学者こそ、我々が本当に必要としている学者ではないか。

 我々は「わかる」ことを誇る学者よりも、「わからない」と言って頭を垂れる学者の方を尊敬すべきではないだろうか。我々が科学という学問によって自然界に対峙する理由は、自然界を解明し、消費し尽くすためではないだろう。

 科学研究が進歩すればするほど、最終的には人間のそれまでの知性では対処できない本当の神秘の姿が現れ出る。それは現代の量子力学の研究を見ても明らかである。我々は解明のために学問を行うのではない。解明は目的ではなく、手段に過ぎない。解明を重ねれば重ねるほど、対象は謎の姿を現す。その謎に直面する体験が、本当の学問体験であるはずだ。

 そうした「知ること」の原点に立ち返ることが、我々には求められている。今回の危機が過ぎ去っても、将来、我々はまた新たな危機に直面するだろう。その時に求められることは、耳に心地いいことを言う学者に騙されることではない。我々の一人一人が学問の原初的態度を思い出し、「わからない」ということの重要性に立ち返ることが求められている。