戦争と平和、そして無記

国際政治や歴史、およびその根底にある人類の心のメカニズムについて考察していきます。

第百十二回 ディープステートはどこにある(1)

1.みんなから感謝される悪魔

 DS(Deep State ディープステート)という言葉を聞く時、頭に何が浮かぶだろうか。ロックフェラーであろうか。ロスチャイルドであろうか。あるいはそういった富豪を手下として使っていると噂されるシェルバーン一族であろうか。

 ところで私の頭に真っ先に思い浮かぶDSは、そうした陰の権力者ではない。身近なサラリーマンである。食品業界で働いてきた安部司さんの言葉を、私は思い出す。

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 42-43頁

 なんのためらいもなく、添加物を売りさばくことしか頭になかった自分。営業成績が上がることをゲームのように楽しんでいた自分。職人の魂を売らせることに得意気になっていた自分・・・。

 たとえば適切ではないかもしれないが、軍事産業と同じだと思いました。人を殺傷する武器を売って懐を肥やす、あの「死の商人」たちと「同じ穴のむじな」ではないか。

 このままでは畳の上では死ねない――そう思いました。

 

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食品の裏側 安部司 東洋経済新報社

 

 安部さんは大学で化学を専攻し、卒業後は食品添加物の会社に就職した。そこで添加物の凄まじい力を目の当たりにする。魔法の粉と出会った安部さんは、「天職だ」と確信する。「かあちゃん!俺は日本一の添加物屋になってみせるぜ!」と意気込んだ彼は、階段を駆け上がるように成長し、いつの間にか「神様」と呼ばれる男になっていた。

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 30頁

いつしか私は、

「歩く添加物辞典」

食品添加物の神様」

などと呼ばれるようになり、地元の加工食品業者や職人さんたちからは、

「困ったときの安部頼み」

と相談事がどんどん持ち込まれるようになりました。

 仕事と関係のあるなしにかかわらず、相談の電話はひっきりなし。また私も、添加物のことならどんなことでも即座に答えることができました。さしずめ「添加物アドバイザー」といったところです。

 

 「歩く辞典」は、食品会社の様々な問題を解決してゆく。ある日、惣菜メーカーから「困った」と相談が来る。中国から大量輸入したレンコンが真っ黒だ。返品はできない。だが売り物にはならない。どうしたものか。添加物の神様は、山上に輝く太陽の光のように言葉を降ろす。これこれの添加物を何ミリグラム使い、漂白剤をこのように使えばいい。

 神のお告げがなければ、その会社は仕入代金が無になるところだった。だが、魔法の粉のおかげで黒いレンコンは見事に変身し、売り上げも上々、安部さんは拝まんばかりに惣菜メーカーから感謝された。このようなエピソードは無数にあった。ある食品会社の社長は、安部さんの銅像を会社に建てると言い出した。これには安部さんも、喜びながらも困ったそうである。

 普通、サラリーマンは自分の会社を儲けさせるだけで得意満面である。だが安部さんはそれで終わらない。取引先の企業にも莫大な利益をもたらした。業界全体が安部さんを頼った。正に新入社員時代に「かあちゃん」に誓った「日本一の添加物屋になる」という夢が叶ったのである。

 だがある日、神様は自らを悪魔だと自覚する。「神様、仏様、安部様」と言われた魔法使いは、皆から感謝されることで、自分のことを神様だと思ってきた。これが人間と悪魔との違いである。神を演じる悪魔は、自分が悪魔であることを知っている。だが人間は気づかない。自分が何をしているのか、自分でわからないのだ。

 

ルカ福音書 第23章34

そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」

 

 悪魔に憑かれている人間にそのことを教えるのは、悪魔でもなければ人間でもない。天使の力が必要であろう。安部さんにとって、その力は愛する子どもたちに宿っていた。利益の共同体の中に埋もれているうちは、そのことに気づかない。青い鳥は食品業界ではなく、自分の家にあったのである。

 

2.自分の顔を見た瞬間

 我々の予想に反し、悪魔は法律を破らない。悪人は法律違反をするかもしれないが、悪魔は違法なことはしないのである。安部さんにも遵法の誇りがあった。

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 45頁

 ただし、それでも、私は法を犯してきたわけではないのです。国の定める基準にきちんと従って添加物を使用してきました。使い方も量も基準を守ったし、ラベルにも正当に表示をしてきました。

 

 安部さんは当時、1500種類以上の添加物について、その危険性や使用基準について頭に入れていたそうである。何をどのように使えば厚労省の基準に反しないか。プロ中のプロとして、ガイドラインを逸脱しない添加物の使い方について熟知していた。そんな遵法精神の権化のもとに、鏡は突然降ってきた。

 それは長女の三歳の誕生日であった。添加物の神様として、迷える人々から常に助けを求められていた安部さんは、昼夜を問わずに働いていた。そのため普段は家族と食卓をともにする時間はなかった。そのことは安部さんに罪悪感を抱かせていた。

 せめて誕生日くらいは一緒に食事をしよう。そう思った安部さんは、急いで仕事を済ませ、大慌てで帰宅した。安部さんがせわしなく食卓についた時には既に、数々の御馳走が並べられていた。その中に、運命のミートボールがあった。祝杯の後、安部さんは可愛らしいミッキーマウスの楊枝が刺さったミートボールを、何気なく口に放り込んだ。その瞬間、彼は凍りついた。

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 35-36頁

 それはほかならぬ、私が開発したミートボールだったのです。

 私は純品の添加物ならほぼすべて、食品に混じりこんでいるものでも100種類ほどの添加物を、舌で見分けることができます。いわば「添加物の味きき」「添加物のソムリエ」と言ったところでしょうか(ただ、ワインのソムリエと違い、あんまりなりたいという人はいないでしょうが・・・)。

 コンビニの弁当などを食べるときも、

 「このハムはちょっと『リン酸塩』が強すぎるな」

 「どうしてこんなに『グリシン』を使わなくてはいけないんだ」

 などと、ついつい「採点」をしてしまうくらいです。

 そのミートボールは、たしかに私が投入した「化学調味料」「結着剤」「乳化剤」の味がしました。

 

 奥さんはミートボールを温めて、そのまま皿に出したのではなく、ひと手間かけてソースをからめていた。また、ミッキーマウスの楊枝を使うなど、盛り付けもこだわっていた。そのため安部さんも視覚では「例のミートボール」だとわからなかった。だが、さすがはソムリエである。彼の味覚は瞬時にその異常性に気づいた。

 もちろん子どもたちにはわからない。おいしそうにそれを食べている。わかるわけがない。安部さんは魔法使いであり、子どもたちの舌を騙すプロだったからだ。悪魔的手法がふんだんに練り込まれた物体に対して、安部さんの子どもたちの味覚が「おいしい」と反応することは、数式のように正確な公理であった。

 その瞬間、安部さんは大慌てで皿を両手で覆った。「ちょ、ちょ、ちょっと、待て待て!」子どもたちは驚いて聞く。「パパ、なんでそのミートボール、食べちゃいけないの?」しどろもどろに、安部さんが答える。「とにかくこれは食べちゃダメ、食べたらいかん!」

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 42頁

 ――そうだ、自分も、自分の家族も消費者だったのだ。

 いままで自分は「つくる側」「売る側」の認識しかなかったけれども、自分は「買う側」の人間でもあるのだ。いまさらながらそう気づいたのです。

 その夜、私は一睡もできませんでした。

 

 人は、多くの人々から感謝されると、自分を神だと思い込む。だが、悪魔から感謝される者は悪魔でしかない。安部さんは業界から感謝されたが、全国の子どもたちから感謝されたわけではない。業界が安部さんに感謝したのは、安部さんが利益そのもの、つまりマネーメーカー(Money Maker)だったからである。

 自分の子どもの口に絶対に入れることができないものを、全国の子どもたちに食べさせていた。それが「神様、仏様、安部様」という衣の奥にあった彼の真の姿であった。子どもの誕生会という鏡で自分の本当の顔を見た安部さんは、一睡もできなかった。

 法律違反をしたわけではない。だが、真の悪は法律云々という狭い次元のものではない。合法的に悪を為すことが真の悪であり、法律の壁を簡単に乗り越えるからこそ本当の悪魔なのだ。このことはほとんどの人が気づかない。気づかぬまま悪魔システムの歯車となって働く。その点では、安部さんの気づきは稀であり、天使の恩寵と言えた。

 その後、安部さんは会社を辞めた。トップセールスマンとして高給を稼ぎ、家族の生活の心配もあったが、本当の悪に気づいた人間はそのまま野放図に悪魔を続けることはできない。退職後、安部さんは無添加明太子の製造に携わりながら、添加物についての講演活動をするようになった。

 

www.youtube.com

 

3.テーブルに載っているDS

 大手ハンバーガー企業は、「端肉」を使っている。「端肉」とは、牛の骨から削り取った廃材としての肉のことであり、そのままではミンチにもならないし味もしない。だが一応牛肉なので、これによって作られたハンバーガーは「100%ビーフ」と称される。

 レトルトのミートボールも同じである。本来なら廃棄物にしかならないクズ肉を使うのである。そのままでは食品にならないので、人造肉と言われる「組織状大豆たんぱく」を加える。これによって形にならないクズ肉を、肉の形に加工する。

 だが形だけでは味がない。そこで「ビーフエキス」「化学調味料」「ラード」「加工でんぷん」等を大量に入れて味付けをする。さらに「結着剤」「乳化剤」を入れて、工場で大量生産をしやすくする。だが形と味ができても、色が灰色なら誰も食べない。そこで「着色料」で色付けし、腐らないようにするために「保存料」「PH調整剤」「酸化防止剤」を入れる。

 これで肉の部分は完成だが、それだけではない。タレも全て添加物である。本物のソースやケチャップを使ってしまえばコストがかかる。そのため、「氷酢酸」を薄め、カラメルで黒くしたものに、「化学調味料」を加えてソースもどきを作る。またトマトペーストに「着色料」で色を付け、「酸味料」「増粘多糖類」などを加え、ケチャップもどきを作る。

 こうして「ミートボール」という名前の化学製品が出来上がる。安くておいしい。調理の手間も省ける。子どもは喜ぶ。お母さんも喜ぶ。会社は儲かる。社長は従業員に給料を払える。従業員はその給料で家族を養える。誰もが喜ぶシステムであるから、指導者としての安部さんはヒーローである。

 だが大海原に浮かぶ船は、板一枚の下が地獄である。幸せな食卓は実は地獄なのかもしれない。その「ミートボール」と呼ばれる添加物のカタマリは、まともな神経を持つ人間ならとても口にできるものではない。

 

食品の裏側 みんな大好きな食品添加物 安部司 東洋経済新報社 43-44頁

 先ほど紹介したレンコン会社の社長Cさんも、「あのレンコンは自分では食べない」と言っていました。それも当然です。あの真っ黒な「廃材」みたいな色をしていたレンコンが、一瞬のうちに真っ白になる過程を見れば、まともな神経を持つ人間ならとても口にできないでしょう。

 餃子屋のDさん、豆腐屋のEさんも、同じ。

 「自分のところでつくっている食品は食べない」

 そう言い切る人がどれだけいたことでしょう。

 アジの干物をつくっている工場のパートのおばちゃんの話も思い出しました。

 あるとき割引で買える社内販売カタログが回ってきた。そこには自分のところでつくっているアジの干物と、こだわりスーパーのアジの干物が並んでいる。パートのおばちゃんは全員、こだわりスーパーのアジの干物を選んだというのです。

 自分の工場のものは、次々と「白い粉」を大量に流し込んでつくった添加物の液体に、アジを漬けてつくる。なかには刺激臭のあるものもあり、ゴホゴホとむせこみながら作業をするのです。

 

 「まともな神経を持つ人間ならとても口にできない」ものに対して、なぜ厚労省は「安全」というお墨付きを与えるのか。なぜみんなにとって危険なものをマスコミは報じないのか。この構図には既視感がある。結局のところ、添加物に限った問題ではない。ワクチン、放射能遺伝子組み換え作物、5Gの電波・・・何から何まで同じである。

 国は安全だと言う。御用学者は安全だということを証明するための科学的データをふんだんに用意している。マスコミは御用学者しか出演させない。そうやって安全神話が確立してゆく。だが、そんなものは悪魔が人間に見せる夢の世界に過ぎない。まともな神経を持つ人間なら、自分の子どもには近寄らせないはずだ。

 だからといって、レンコン屋のC社長や餃子屋のDさんを責めても意味がない。彼らは合法であり、我々と同じ小さな生活者に過ぎない。また、彼らはロックフェラーやロスチャイルドの命令でそういうことをやっているのではない。ということは、光の戦士たちがDSの悪玉を抹殺しても、我々の食卓の上には地獄のミートボールが変わらずに載っているということである。

 一部の陰謀論者たちは、DSを闇の勢力と捉え、光の戦士たちが我々市民のために戦っていると信じている。トランプ前大統領が再び大統領になれば、光が闇に勝ち、一般大衆が救われると信じている人達もいる。だが、私はそうした話には興味が持てない。

 私にとってDSはそういう大それたものではなく、日常生活に浸透しているものである。ダボス会議に潜入したり、スイスの要塞に乗り込まなくても、近くのスーパーに行けばDS製のミートボールや調味料、弁当などを見ることができる。

 悪魔は空想上の存在ではない。どこにでもいる。自分の子どもに食べさせることができないものを作っている普通の会社員も悪魔であるし、それを買ってその会社の存続に貢献する私も悪魔である。悪魔が見たければ、風呂場に行って鏡を見ればいい。誰でも簡単に見ることができる。

 

第百十一回 薬屋の帝国と奴隷たち(2)

1.見慣れた風景と見慣れない風景

 日本は豊かな国か。30年前ならYESと言えたかもしれない。だが今は言えない。ジャーナリストの中岡望氏は、日本経済の真の姿について次のように述べている。

 

news.yahoo.co.jp

 

 特に深刻な問題が、日本の子どもたちを侵食する貧困の波である。東京都立大学の阿部彩教授によると、かつての日本は世界第二位の経済大国であったが、今は「子どもの貧困」大国である。

 

president.jp

 

 沖縄で「子ども食堂」を運営している山田マドカ氏(那覇市議会議員)は、ツイッターで子どもの貧困に関する実体験を報告している。そこには、「お金が無くて、生後まもない赤ちゃんにミルクを薄めて飲ませていたお母さん」の話が出てくる。まったくひどい話であるが、これが貧困大国の現実なのであろう。

 

お金が無くて、生後まもない赤ちゃんにミルクを薄めて飲ませていたお母さん

 

沖縄の子ども食堂、2割が弁当配布に切り替え

 

 この国の相対的貧困率は想像以上に高い。この問題は国力の著しい低下を招くため、官僚や学者たちは二十年以上に渡って議論している。だが改善の兆しはない。余計にひどくなっている。我々も徐々に錆びゆく日本の風景に慣れっこになってしまっている。

 他方、見慣れぬ風景が最近ではあちらこちらに顔を出している。ワクチンを接種する人に対しての行政サービスである。

 

ワクチン接種移動支援事業「らくタク」について

 

新型コロナウイルスワクチン集団接種会場にて、帰りのタクシー料金500円分を補助します。

 

 自己責任。自助努力。自業自得。新自由主義を旗印に、弱者に対して氷のように冷たい態度をとってきたこの国が、なぜかワクチンに関しては態度を豹変し、猫なで声で近づいてくる。これは驚きである。だが、格差社会の大先輩であるアメリカはもっと凄い。金持ちにやさしく、貧困層に冷たい国として世界的に有名であったアメリカであるが、ワクチンに関しては階級の垣根をこえて大盤振る舞いである。

 

ワクチン接種なら抽選で「1億1000万円」「NBA招待」…接種伸び悩む米で「特典」作戦

 

 冷酷から親切への急転換。見慣れぬ風景が展開してゆく。だが、それを「見慣れぬ」ものとして驚くのは、私が先進国の常識に染まりすぎたからであろう。発展途上国では、こんなものは日常の風景である。いちいち驚くものではない。以下を見てもらえばわかる通り、アフリカでは薬屋帝国の振る舞いは人々の日常生活に深く浸透している。彼の地では、これは「生ぬるい」風景なのだ。

 

2.観光地の絵はがきと同じくらい生ぬるい

 「ナイロビの蜂(The Constant Gardener)」という映画がある。アメリカでは2005年、日本では2006年に公開された。ケニアのナイロビを舞台に、製薬会社の巨大な力と悪行を背景に展開する男女の愛の物語である。

 

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ナイロビの蜂(The Constant Gardener) 2006年公開

 「ナイロビの蜂」は邦題であり、原題はThe Constant Gardenerである。「いつも通りの庭師、忠実な庭師」という意味である。レイフ・ファインズ(Ralph Fiennes)演じる主人公のジャスティンは、英国外務省の役人であるが、休日は庭をいじり、植物の世話を楽しむ男である。つまり、箱庭の幸せを愛するThe Constant Gardenerである。だが、箱庭は突然崩壊する。愛する妻が死ぬのである。

 それまでの彼は、国家に忠実な公務員であり、自分の生活の範囲、すなわち箱庭にしか関心がなかった。だからイラク戦争において何十万人の人々が死んでも、「上からの命令だったので」という一言で終わったのだった。

 だがそんな庭師も、自分の妻が死んだことに対しては公務員的無関心を貫くことはできない。イラク人が50万人死んだ事件は、彼にとって大事件ではなかった。それは庭の外の事件に過ぎなかった。だが、1人の美しい妻が死んだ事は大事件であった。箱庭を崩壊させる事件だったからだ。

 彼女の死は明らかに不自然であった。だが警察はThe Constant Gardenerであった。つまり、かつてのジャスティンと同じだった。真実を見ない。あるいは見て見ぬフリをする。女はアフリカ人と浮気をし、痴情のもつれの結果殺された。警察はそうしたありきたりのストーリーで処理しようとした。

 もちろん、ジャスティンは納得がいかない。事件は明らかにそんな小さなものではない。箱庭を破壊された彼は、それまでのThe Constant Gardenerとしての態度を変え、事件について自分で徹底的に調べていくようになる。結果、ありふれた色恋沙汰では済まないような、予想外に巨大な真相が見えてくるようになる。

 レイチェル・ワイズ(Rachel Weisz)演じるテッサは、アフリカで人道支援活動に従事する英国人女性であった。ジャスティンが事件のことを調べていくうちに、彼は妻の未知の面を知るようになる。テッサは明らかに「知りすぎた女」であった。彼女は製薬会社と英国政府との濃厚な関係、そしてその巨大な暴力がアフリカで行っている大規模人体実験について「知りすぎて」いたのだ。

 薬屋帝国にとってテッサは邪魔者となった。帝国の実態について何も知らなかった夫は、妻の死の謎を追ううちに、自身も知り過ぎた男となってゆく。箱庭の住人だった頃には見えなかった世界、あるいは目を背けてきた世界が見えてくる。それはガーデニングによって整えられた庭と違い、搾取と陰謀による荒野であった。

 邦題は「ナイロビの蜂」となっている。これは映画に出てくる製薬会社の名前がThree Bees(三匹の蜂)だからである。妻は痴情のもつれで死んだのではなく、蜂の毒針によって殺された。この映画では製薬会社の恐ろしさが描かれている。彼らはアフリカで人体実験を行い、その闇を明るみに出そうとする人間に対しては暗殺も厭わない。

 彼らは仁術の薬師(くすし)ではない。利益のためなら手段を選ばない巨大な暴力装置である。映画はそれを忠実に描写するが、原作者のジョン・ル・カレはこれを「生ぬるい」と言う。ル・カレは作家になる以前、ジャスティンと同じく、大英帝国の公務員だった。だが、彼の職場は「生ぬるい」箱庭ではなかった。

 ル・カレはロンドンのMI5(Military Intelligence Section 5 軍事情報部第5課)に勤務していた。つまりスパイであった。そのため、彼は現場をよく知っていた。箱庭の外に展開する世界について、彼は身をもって知っていたのである。そのため「ナイロビの蜂(The Constant Gardener)」は現実世界と比べれば「生ぬるい」と彼は言う。「観光地の絵はがきと同じくらい生ぬるい」のだそうだ。

 

jbpress.ismedia.jp

 

ジョン・ル・カレの鷹のような目

 

ジョン・ル=カレ氏インタビュー:スイス巨大薬品企業の闇に挑む新作

 

3.観光地の風景は変わらない

 2009年、ファイザーとナイジェリアの原告団との間で和解が成立した。ファイザーの未承認ワクチンによって被害を被ったナイジェリアの人々が、総額2700億円の和解金をファイザーから受け取ることになったのだ。

 

www.afpbb.com

 

 これは一見、ハッピーエンドのようである。格差社会の中で貧困に苦しむ日本人からすれば、羨ましい話に見えるかもしれない。だが、もし本当にそう思ってしまうのなら、その人の意識は観光地の絵ハガキのように生ぬるい。

 製薬帝国が行ってきた罪の深さは、たったの2700億円で贖えるものではない。それはあまりにも安過ぎる。この事件は氷山の一角に過ぎない。アフリカの人たちは、危険な医薬品やワクチンの人体実験となってきた。彼らの体で実験した後に、それらは先進国で販売され、普及するのである。

 あるアフリカ人は言った。私たちが食べ物に困っている時、西欧人は何もしない。だが、いったん私たちの間で病気が流行ると、彼らは大量の薬を持ってアフリカに乗り込んでくる。白衣の彼らは子どもたちの腕にブスブスと針を刺し、血液を採取したら、さっさと飛行機に乗って帰ってゆく。

 先進国では未承認のワクチンや薬品が承認されるまで時間がかかる。また、明らかに未知の危険性を有するものを治験するには、様々な面で難しい。そこで製薬会社はアフリカで人体実験をする。もちろん、正義感に溢れたアフリカ人はそんなことを許さない。そのため製薬グループはそういう邪魔者が出た時のために、普段から脅しの材料を収集しているのである。

 ファイザーはトロバン(Trovan)という未承認のワクチンを、ナイジェリアの保健省の許可なく、子どもたちに投与していた。そのため多くの子どもたちが後遺症に苦しみ、あるいは死んだ。被害者とその家族は原告団を結成し、ファイザーを訴えた。

 ファイザーは「過失なし」として、訴訟の取り下げをナイジェリア政府に求めた。取り下げの権限は法務大臣が持っていた。そのためファイザーは当時のナイジェリアの法務大臣、マイケル・アオンドアカー氏を脅迫するために、氏の汚職の経歴を調査員に調べさせていた。

 

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Michael Aondoakaa

 このことは後に暴露され、ウィキリークスに載ることになる。ファイザーは最初、子どもたちの死とワクチンとの因果関係はないとして一切の責任を否定していたが、次々と裏情報が明るみになったことで、2700億円を支払うという和解の道を選んだのであった。

 

WikiLeaks: ファイザー ナイジェリアで子供への実験薬投与による医療被害のもみ消しをはかる

 

米ファイザーによるナイジェリアでの裏工作 ウィキリークスに掲載

 

 だが、先にも記したようにファイザーからすれば2700億円は安い買物である。それまでの人体実験により獲得した利益は莫大であるから、そのうちのほんの一部を被害者たちに支払ったとしても、利益は揺らがない。

 また、彼らの態度は事件後も変わらない。結局、この事件も忘れ去られ、風化した。今、世界でこの事件を思い出す人はほとんどいない。人々が忘れやすいことを利用し、彼らはアフリカで同じことを繰り返し、莫大な利益を獲得する。

 今、ファイザーのワクチンは世界を席巻している。だが、どのメディアもファイザーの過去の事件について全く報じない。ナイロビの蜂は今も世界を飛び回っているのに、誰も気にしない。The Constant Gardenerは箱庭の外に関心を持たないのだ。

 だが、蜜蜂は密かに狙っている。アフリカ人だけが毒針の餌食になる時代は、もしかしたら終わったのかもしれない。次は我々も刺されるかもしれない。いや、既に刺されているのかもしれない。おかげでThree Beesの売上は、過去最高を記録している。今後も更に業績を伸ばしてゆく見込みである。

 

www.asahi.com

 

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※ 次回は2021年8月1日にアップロード予定です。

 

第百十回 薬屋の帝国と奴隷たち(1)

1.Money幕府は薬屋の言いなりになる

 江戸時代の人々に、次のような予言をしたらどうなるだろう。

 

「およそ400年後、薬屋が莫大な力を持ち、幕府をも動かすようになる。大名や将軍もその意向には逆らうことができない。幕府は金庫から500万両を差し出し、薬屋から薬を売ってもらう。その薬によって、町民には死人も出る。そうなっても薬屋は責任を取らず、幕府が肩代わりする。」

 

「武士だけでなく、かわら版や豪商も薬屋の言いなりである。ある商店主は薬を拒む番頭を店から追い出した。町内会も薬屋の味方で、薬に反対する町民を皆で苛めるという有様である。」

 

 予言とはいつの時代も意味不明な文言である。その内容はその時代の社会常識を超えているからである。江戸時代の人々にとってこの予言が意味不明であるのは、パンデミックやワクチンが存在しなかったからである。と同時に、より重要な要素がある。江戸時代にはグローバル経済が存在しなかった。

 現在の世界では、恐怖の大王は空から降って来なくても、地上の隅々まで浸透している。それがマネーパワーである。誰もが金を稼ぐために生き、金の支配下にある。誰も金には逆らえない。金持ちが尊敬され、名誉を得るようになる。

 

www.publickey1.jp

 

 江戸時代と違い、現在の将軍は徳川という人間ではない。金(Money)である。幕府(政府)が金庫に金を持っているのではない。金が政府を持っているのだ。金に選ばれた人間が政治家になり、権力となる。かつて武士として幕府に仕えた官僚たちも、今では天下り先の企業、つまり金のために働いている。

 今、最も儲かる商売は何だろうか。それは米作りでもなければ刀鍛冶でもない。小豆の卸売でもない。薬屋である。江戸時代の貨幣価値も変動しており、一概に言えるものではないが、江戸初期なら1両は現在の10万円程度の価値があったそうである。となると、5000億円なら500万両であろう。

 当時の人からすれば、500万両は目の玉が飛び出るような大金である。金沢は「加賀百万石の城下町」と言われたそうだが、百万石は今の貨幣価値では約600億円だそうである。となると、加賀藩の財力ではワクチンを5000億円で購入することは叶わぬ夢のようだ。

 

石川県民「百万石っていうけど、お金でいうといくらぐらいなんだろう」

 

www.jiji.com

 

 最高の勲章を貰ったゲイツさんは、2002年から巨大な薬屋さんのファイザーに投資していたそうだ。もともとはコンピューター屋さんだったはずであるが、さすがの先見の明である。また、ゲイツさんはWHO(世界保健機関)の金庫番でもある。

 

www.motleyfool.co.jp

 

www.swissinfo.ch

 

 鎖国をしていた時代と違い、今の幕府は将軍も外国人の言いなりにならざるを得ない。かつて、この国では「切り捨て御免」という制度があり、武士には無礼な町民や農民を切り捨てる特権があったが、現在の武士は金持ちの外国人に無礼な振る舞いをすれば切り捨てられる可能性がある。

 徳川幕府は、1867年、大政奉還により幕を閉じる。その後、天皇がこの国の主権者となったが、皇国は1945年に滅亡する。以後、この国の玉座に座るのは人間ではない。そこに座るのは、金(Money)である。グローバル経済がこの国の王なのだ。

 

ビル・ゲイツ共同議長による安倍総理大臣表敬|外務省

 

菅総理大臣とビル・ゲイツ共同議長との電話会談|外務省

 

2.医は金術

 かつて、「医は仁術」と言われ、「医」は人を救う道であった。またそれは、人を救うことを通して自らを救うという「道(どう)」であった。だが、その信念は既に風化した遺跡のようなものになりつつある。医者がマネーパワーから外れることは、出世街道からの離脱を意味する。

 医師としてどんなに優れていても、マネーに反逆する者は出世できない。原発に逆らう科学者が出世できないことと同じである。現在、医は「仁術」ではなく、「金術」なのである。だがこのことは一般にはまだ浸透していない。だから医療業界について詳しくない人が以下の記事を読めば、驚くかもしれない。業界の住人からすれば、今更言うまでもない常識に過ぎないが。

 

医者と製薬会社の「悪しき慣習」|尾崎章彦(乳腺外科医)

 

医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実|東洋経済

 

製薬会社と医師は癒着で多額利益、臨床研究の不正事件で数千億円の医療費が無駄に

 

ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名

 

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フジテレビの番組に出演する二木芳人教授

 テレビによく出る二木先生の悪口を言っても意味がない。医者だけでなく、マスコミもマネーパワーの奴隷である。新聞屋さんも、テレビ屋さんも、広告収入がなければ潰れてしまう。その屋台骨を薬屋さんが支えている以上、大手メディアが医者を出演させる場合、忖度なしで本当のことを言ってしまう近藤誠医師のような危険人物を出すわけにはいかないだろう。

 

kondo-makoto.com

 

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医者の大罪 近藤誠 SB新書

 マスコミも商売でやっている以上、必然的に二木先生のようなマネーパワーの奴隷を出演させざるを得ない。これはマネーの構造として成り立っていることであるから、二木先生を非難してもあまり意味がない。仮に、二木先生が心をいれかえて仁術を優先するようになるなら、このシステムは冷淡に部品の交換をするだけである。代わりの奴隷はいくらでも存在する。

 

news.livedoor.com

 

3.薬屋の帝国に懐疑主義者は不要である

 医は既に仁術ではないし、薬業も当然仁術ではない。それは金儲けである。製薬業界のスターであるアルバート・ブーラさんも、はっきりと言っている。

 

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Albert Bourla and Joe Biden

www.businessinsider.jp


www.bloomberg.co.jp

 

 ブーラさんはユダヤギリシャ人で、もともとは獣医師であったようだ。そこから大出世して、今では製薬業界の大スターである。あまりにも偉大なスターなので、総理大臣が会いたいと思っても会えない。

 

「ダメだ。遅すぎる」声を荒らげた首相、ファイザーCEOに直談判|読売新聞

 

 菅義偉首相が外務官僚に怒号…? ワクチン外交「失敗」の裏側

 

 山口真由氏「日本からすりゃ良かったじゃんと…」菅首相の電話会談にチクリ

 

 ブーラさんはなかなか会ってくれなかったが、日本政府の熱心なラブコールに応えてくれ、最後は電話でお話してくれたわけである。首相がアメリカ人と会うためにアメリカに行って電話会談とは、日本人からすればガッカリかもしれないが、相手は薬屋の大スターであるから仕方ないのである。

 ただ、このように一生懸命努力して近づいてくる自民党政権に対しては、薬屋帝国も無下にはしないだろう。菅政権が安泰かどうかはわからない。忠犬はいつでも切られるリスクをかかえている。だが反逆しなければ左遷させられても、殺されることはないだろう。

 だが、逆らう政権は潰される可能性がある。タンザニアのジョン・マグフリ大統領(John Magufuli 1959-2021)は、「輸入ワクチンに細心の注意を払わなければならない」と言い、ワクチンに対して極めて懐疑的であった。その後、大統領は亡くなった。ワクチン帝国に逆らった結果、心臓発作で死亡。後任はワクチン賛成。あまりにも分かりやす過ぎて涙が出るような話である。

 

www.afpbb.com

 

japanese.joins.com

 

  新しい大統領はワクチンについて180度転換しただけではない。前大統領が決して許さなかった中央銀行の仮想通貨受け入れまで容認した。ワクチンを輸入し、薬屋の言いなりになる。なおかつ、中央銀行を国際金融資本に明け渡し、グローバル経済の奴隷に成り下がる。こうした売国政策を続ければ、政権は安定するだろう。新大統領はきっと長生きするに違いない。

 

www.jiji.com

 

www.nikkei.com

 

第百九回 コロナより恐い同調圧力

1.誰がコロナを恐れるべきか

 ワクチンを打つなら、中身について何も知らない方が気楽かもしれない。「知らぬが仏」というものである。だがこのブログの常連読者でそういう人はいないだろう。自分の体に何が入るのか。真っ当に物事を考える人間なら疑問を抱くはずである。それゆえ、前回まではコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチンのメカニズムおよびそのリスクについて考察してきた。

 もちろん、リスクを知りながらもワクチンを接種したいという人もいるだろう。これからアメリカに移住するという人なら、ワクチンを打ってから行きたいと思うかもしれない。あるいはコロナ病棟で働く医療従事者なら、感染リスクを避けるためにワクチンリスクを取るかもしれない。いずれにせよ、様々な状況があり、それぞれの人の判断がある以上、ワクチンを全否定しても意味がないのであろう。

 全肯定も全否定も賢明ではない。となれば、他の人の判断はまず横に置き、自分のリスク状況について知ることが肝要であろう。このウイルスの特徴はいくつかあるが、顕著な点が二つある。一つは日本人のリスクが格段に低いこと、もう一つは年齢によってリスクの差があることである。

 一つ目は国の違いである。アメリカでの新型コロナウイルスによる死者数は約60万人、他方、日本では約1万5千人である。アメリカの人口は約3億3千万、日本は約1億2千5百万である。つまり、圧倒的にアメリカよりも日本のリスクは低い。アメリカではワクチンの価値は高いだろう。だが、日本ではそこまでではない。

 二つ目は年齢による違いである。国立社会保障・人口問題研究所によると、2021年6月28日時点での新型コロナウイルス年齢別死亡者数は以下の通りである。

 

新型コロナウイルス感染症データ|国立社会保障・人口問題研究所

 

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新型コロナウイルス死亡者数 国立社会保障・人口問題研究所 2021年6月28日

 

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新型コロナウイルス死亡者数 国立社会保障・人口問題研究所 棒グラフ 2021年6月28日

 20歳未満の死亡者はゼロであり、20代は男女あわせて7人である。なお、2020年に自転車事故死亡者数(30歳未満)は33人である。

 

news.yahoo.co.jp

 

 となると、若者からすれば新型コロナウイルスよりも自転車事故の方が脅威である。だが、誰も若者に自転車に乗るなとは言わないだろう。であれば、大人たちが少年少女、若者たちにワクチン接種を強要すべきではない。

 結局、感染リスクとワクチンリスクを比較衡量すべきは、まずアメリカ人やブラジル人、インド人であろう。日本人であるならリスクは格段に低い。その中でもリスクがあるとすれば70代以上の年齢層である。

 とは言っても、個別事情による不安があろう。既往症がある、職場でクラスターが発生した、高齢者施設など集団的な居住空間で暮らしている等々、の事情である。あるいは逆に、高齢者であっても独り暮らしで健康に自信があり、既往症もないためリスクは低いという人もいるだろう。

 そうした様々な事情は、あくまで個別的なものであり、その人の状況はその人のものである。そういった個々人の状況によってリスクが大きく変化するにもかかわらず、一億総ワクチンという流れはあまりにも全体主義的であるし、暴力的である。この風潮が今後加速するなら、ウイルスやワクチンより、同調圧力の方が余程恐ろしいとなるだろう。

 

2.「デマに注意せよ」というデマ

 予防接種法9条においてワクチンの接種は「努力義務」となっている。だが国民が接種のために努力すべきというのはおかしな話である。我々はワクチンについて正確に知り、正しく考えることが義務のはずである。接種はその義務が果たされた上での行為の帰結に過ぎない。何も考えずに国の言いなりになってワクチンを打った人が、一体、何の「努力」をしたことになるのか。

 逆に、自分で考えるという努力の結果の判断として、接種しないことを決断した人が、まるで努力義務の懈怠であるかのように思われるのは心外であろう。努力せず、陰謀論を信じる人たちが、ワクチンを拒否しているという構図が世の中で信じられつつある。政府やマスコミもそうした「非国民」を糾弾する流れとなっている。

 だが、前回までのブログの内容を読んでもらえればわかる通り、私がこれまでワクチン考察の材料としてきたものは徹底的に科学的な知見であり、陰謀論ではない。また、そもそも科学者でない私が科学的にワクチンについて調査するという労力を背負う羽目になったのは、政府、メディア、御用学者たちが肝心なことを隠し、ワクチンの良い面ばかりをアナウンスし、そのリスクについて沈黙に徹するからである。

 日本の新型コロナウイルスワクチン接種担当大臣は、河野太郎氏である。つまり氏がこの国のワクチン接種の最高責任者である。その氏がワクチンデマに騙されないために注意を喚起する文章を書いている。氏は科学的な知見に基づき、非科学的なデマに惑わされないことの重要性を説いている。しかし残念なことに、最高責任者の文章自体に科学的に疑わしい点が数か所ある。

 

www.taro.org

 

 例えば氏は、「長期的な安全性がわからない」という項目について、「コロナワクチンの長期的な安全性について特段の不安があるということはありません」と断言しているが、長期的な安全性について不明であることについては、これまでのブログで何回も指摘してきた通り、ファイザーの説明書に書いてあることである。

 ファイザーが説明書にそう書くのは当然である。なぜなら世界のどんな優秀な学者であっても、このワクチンの安全性についてはまだわからないからである。長期的な安全性については、今後接種が進む中で判明していくことであり、今の時点で「不安はありません」と断言することは極めて非科学的である。よって「長期的な安全性がわからない」というのは科学的な事実であり、デマではない。

 また氏は「ADE(抗体依存性増強現象)が起きる」という項目について、「ADEの可能性は考えにくいとされている」と述べているが、これも今後わかってくる事項であって、今の段階ではわかりようがない。世界中の学者にわからない事項が、彼の特別な透視能力でわかるとでも言うのだろうか。もちろん「必ずADEが起きる」と言えばデマだろうが、「起こらない」と言ってしまえばそれもデマだ。

 その他河野氏の文章の細かい点についてはシカハンターさんが説明しているので、以下を参照していただきたい。いずれにせよ、氏は「デマに騙されるな」と言うが、氏の言っていることにデマが混ざり込んでいる。このような信用に価しない文章を書いておきながら、「デマに騙されるな」と言っても説得力に欠けるだろう。

 もちろん、氏は科学者ではない。だから科学的に誤った部分があっても致し方ない面もあるかもしれない。そう思っていたら、文章の最後にこう書かれてあった。

 

『この項は「こびナビ」(covnavi.jp、@covnavi)の監修をいただいております。』

 

 「こびナビ」は推進派の学者により運営されているサイトである。つまり、河野氏の文章は素人の筆のみで書かれたものではなく、プロの科学者の監修により出来たものである。プロが監修しておきながらこの杜撰な文章では、プロに対する信頼も怪しいものとなる。「デマに騙されるな」と言う人の言葉が、デマである可能性があるのだ。

 

www.youtube.com

 

 3.デマに殺される

 推進派の学者や政府関係者は、「デマに騙されるな」と繰り返し述べるが、このワクチンの最大のデマは「ワクチンを打てば感染しなくなる」ではなかろうか。多くの人が、ワクチンを打つことは自分の命を守るためだけでなく、人にうつさないためだと考えている。

 

news.yahoo.co.jp

 

 報道の最前線で普通の人よりも格段にコロナ情報に多く接している宮根氏が、「ウイルス感染」と「疾病」の区別すらついていないことは驚きである。SARSコロナウイルス2(Severe acute respiratory syndorome coronavirus 2)というウイルスと、COVID‐19(coronavirus disease 2019)という疾病は、全くの別物である。

 SARS2ウイルスに感染したからといって、COVID‐19という病気が発生するとは限らない。むしろ、ウイルスに感染する人のほとんどは何も起きない。その中の一部でCOVID‐19という疾病が発生し、またその中の一部の人が重症化し、またまたその中の一部の人が死にいたるのである。

 ワクチンの役割は、体内に入ったウイルスに対して、事前に準備した抗体によって攻撃させることであり、他人にウイルスをうつさないことではない。ワクチンには、体内に入ったウイルスの増殖を防ぎ、COVID‐19の発生を防ぐ力はあるかもしれないが、他人にウイルスをうつさない効果まで期待すべきではない。

 

toyokeizai.net

 

 ワクチンを打てば、人に迷惑をかけるリスクが減り、気が楽になる。これは「ぬか喜び」かもしれない。まあ、本人が喜ぶ分には問題はないかもしれない。だが、これは簡単に同調圧力に転化しうる。ワクチンを打てば人に迷惑をかけないとなれば、ワクチンを打たない人は迷惑だとなるのだ。こうしてワクチンを打たない決断をした人が、非国民として非難される構造が出来上がる。

 

職場から接種を強要…「ワクチン打たなきゃクビ」は許されるのか 感染防ぎたい事業者の願いと労働者の自由

 

「ワクチン打たず、感染したらボーナス減、労災認定なし」と上司がハラスメント 職場接種で感じるモヤモヤ

 

ワクチン接種で体調不良になっても「病気じゃないから夜勤して」 これって「ワクハラ」?

 

 「ワクチンハラスメント」被害が急増中…そのヤバすぎる実態|現代ビジネス

 

 前回のブログで紹介した福岡県の26才の女性看護師は、ワクチンを打つことに躊躇いがあったそうだ。もしかしたら彼女はワクチンリスクについて自分で調べて知っていたのかもしれない。だが、結局のところ接種した。コロナが恐いというよりも、同調圧力、すなわち人間に対する恐怖のために、接種を選択せざるを得なかったのだ。接種の4日後、彼女は自宅で死亡していた。

 1945年、沖縄ではガマ(洞窟)での集団自決が頻繁に起きた。米軍に捕まれば男は虐殺され、女は辱めを受けてから虐殺されるというデマが強く信じられていたからだ。死ぬか生きるか、ギリギリの状況を生き延びた上原さんは、「あの時の教育は本当に愚かだった」と語る。

 

www.okinawatimes.co.jp

 

 だが、現在の我々は「あの時」を脱却できているだろうか。はなはだ疑問である。今日もワクチンについてのデマは飛び交っている。ワクチンを打てば他人に迷惑をかけない綺麗な体になれるという信仰が広まっているのである。そしてコロナよりも人間が恐いゆえに、打ちたくないと思いながらも仕方なくワクチンを打っている人たちがいる。今、この瞬間に、打ちたくないワクチンを打っている若者がいるのだ。

 

toyokeizai.net

 

 果たして、上原さんの体験は過去の遺物なのだろうか。もう二度と繰り返されることのない愚かな昔話なのだろうか。私にはそうは見えない。チビチリガマは「終わった」ものではない。むしろ我々がそれを忘却の彼方に捨て去れば捨て去るほどに、それは形を変えて復活する。デマを信じ、他者を非国民と非難する我々のもとに、あの時の亡霊が再び現れる。装いも新たに、進化した形で現れるのである。

 

第百八回 新型コロナワクチンと大出血(6)

1.「お考えください」は「考えないで打て」という意味

 新型コロナウイルスに感染しても、ほとんどの人は重症化しない。無症状で終わるか、普通の風邪のような症状で終わる。それゆえ、ほとんどの人は自分が新型コロナウイルスに感染していることすらわからない。感染に無自覚のまま生活し、普通に会社や学校に行っている人達がたくさんいるわけである。

 ただ、一部の人は重症化する。その際に起きていると思われる現象が、サイトカインストーム(cytokine storm)である。ウイルスを攻撃する働きを持つ免疫システムが暴走し、正常細胞まで攻撃してしまうという現象である。肺でサイトカインストームが起きれば、免疫系が肺の細胞を攻撃する。こうして肺炎が重症化し、患者は自力で呼吸をすることが困難となる。

 

blog.livedoor.jp

 

  ここまでのことは前回のブログで詳述した。免疫暴走がCOVID‐19のキーポイントであることは、読者の方々もよくわかったことだろう。問題は次のことである。実は、免疫暴走はワクチンのキーポイントでもある。

 ワクチンを接種することで、体内で免疫暴走が起こる可能性がある。大手メディアは、これについてほとんど報道しない。それは「副反応」という一語で済まされてしまっている。ワクチンを打てば、腕の痛み、発熱、倦怠感といった「副反応」が出るが、通常は数日で終わると報道される。まるで数日の嵐を耐えれば、その後はウイルスフリーの楽園が待っているかのようである。

 

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朝日新聞 2021年6月27日広告

 「ワクチンを2回打つと、新型コロナウイルス感染症がかなり抑えられます」と政府広報は述べる。だがファイザーの説明書5項1は、「本剤の予防効果の持続期間は確定していない」と述べている。つまり半年もつのか、三カ月で効かなくなるのか、今はまだ誰にもわからないのだ。

 

www.afpbb.com

 

 また「持病のある方にも有効です」と政府広報には書かれているが、ファイザー説明書2項には「接種不適当者」について書かれており、9項には接種要注意者について書かれている。9項1には「予防接種の必要性、副反応、有効性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること」と書かれている。

 また、9項6には「予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への移行は不明である。」と書かれている。ワクチンを打った母親が、乳児に母乳を飲ませられない危険性があるのだ。

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コミナティ筋注 ファイザー説明書

 きちんと説明書を読めば、その文章が未知の危険性についての強い警戒心を背景に書かれていることがわかる。このようなワクチンを、「私も打ちました」と推進派の医者が言っているからといって、「じゃあ打つか」という軽いノリで打てるわけがない。そもそも「ぜひお考えください」と言いながら、政府もマスコミも、国民に対して「考える」ための材料を与えない。

 こうなると、「考えないで打ってください」と言っているようにしか見えない。考えて打つためには、考えるための材料が必要であり、ワクチンを打ったら体内で何が起こるのかについての知識が必要であろう。

 結局、彼らが肝心なメカニズムについて何も言わないため、私自身、苦労して自分で調べる必要性が生じた。その結果、「副反応」という表面的な噴火の奥底にある「免疫暴走」というマグマの正体が見えてきた。ここではそのメカニズムについて述べていきたい。

 

2.免疫暴走を避けるためにワクチンを打ち、免疫が暴走する

 我々は「SARSコロナウイルス2」に感染し、そこから免疫が暴走し、肺炎が重症化することを恐れる。その恐れから、ワクチンを打とうとする。だがワクチンを打てば、SARS2に感染しなくても、体内の免疫は暴走するかもしれない。免疫暴走が恐くてワクチンを打つのに、ワクチンのおかげで免疫が暴走するかもしれないという皮肉である。

 

www.youtube.com

  www.news-postseven.com

 

kondo-makoto.com

 

  我々は「ワクチンの副反応」として様々な症状を聞く。腕の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐、下痢。これらは人によって重い場合もあるが、大概は軽くて済むと聞く。ならば、多少の副反応はあっても感染防止のためなら我慢しようという思考の筋道に流れがちである。

 だが、そうした個々の副反応は表にあらわれる現象に過ぎない。そうした表面的な現象の奥底では何が起こっているのか。そうした噴火の奥底にあるマグマとして、私はワクチンによる免疫暴走が起きていると思っている。

 シカハンターさんは、医師として患者にワクチンを勧めていないそうである。また、自身が経営するクリニックの従業員にもワクチンを打たせていないそうである。もちろん、シカハンターさん自身も打つつもりがない。その理由として、免疫暴走をあげている。ワクチンによって免疫が暴走するメカニズムについて、以下の動画がわかりやすいだろう。

 

www.youtube.com

 

 こうして見ると、皮肉なことだが、新型コロナウイルスとワクチンはその「在り方」が似ているとも言える。それ自体に強力な毒性があるわけではない。だが、それは免疫系の機能不全を引き起こす可能性がある。

 前回のブログで紹介したように、SARS2ウイルスの毒性はインフルエンザウイルスに劣る。しかし、SARS2ウイルスは免疫系の暴走を誘発し、それによって免疫細胞が正常細胞を攻撃することから、重症化を招くリスクがある。

 これと類似するメカニズムが、ワクチンのメカニズムである。コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチンは、一般に考えられているほどに恐ろしい物質で出来ているわけではない。そこに含まれるmRNA(メッセンジャーRNA)はスパイクたんぱくを作るだけの能力しか持たず、細胞内に入っても数日で消える程度の持続力しかない。

 だが、毒性のない物質が、結果的に自己免疫疾患を誘発する可能性を持つ。上記動画の中で、シカハンターさんが何度か「感作(かんさ sensitization)」と言っているが、これは抗原に対する免疫応答の結果として、抗体およびリンパ球が生じ、次に同じ抗原に接した時にアレルギー反応が起きることである。

 わかりやすく説明しよう。シカハンターさんが言うように、細胞の表面には様々なタンパク質が存在している。レセプターやポンプなどのタンパク質である。これらはどの細胞にも「在って当たり前」のものであるから、免疫系は攻撃しない。通常、人間の体内の免疫系は細胞を守るためのものである。だからその仕事は異物の攻撃であり、細胞の攻撃ではない。

 

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もとから在る突起物(タンパク)は相手にしない

 だが、RNAワクチンはmRNAを細胞内に侵入させることにより、スパイクたんぱくが大量に作り出される。こうして細胞の表面にはスパイクたんぱくが数多く突起するようになる。これを免疫系に攻撃させることによって、SARS2ウイルスが体内に入って来た時に、ウイルス表面のスパイクたんぱくを免疫系に攻撃させることがワクチンのシナリオであるが、シカハンターさんは隠れたシナリオが進行することを心配しているのである。

 その裏のシナリオについては、ファイザーも政府もマスコミも黙ったままである。レセプターやポンプなどのタンパク質は在って当たり前であるから、通常なら「感作(かんさ)」されるはずがない。だが、ワクチンを打つことにより普段なら居るはずのない「スパイクたんぱく」という隣人が、細胞の表面に生じることになる。

 この「スパイクたんぱく」という異物、つまり抗原に対する免疫反応として、抗体が生じ、となりの正常たんぱくまでもが「感作(かんさ)」される可能性がある。正常たんぱくからすれば無実の罪であるが、優等生であっても、不良と隣人になれば一緒くたに敵視される可能性があるということである。

 こうしてワクチンの逆説的なシナリオが遂行される。つまり、免疫暴走を回避することを目的としたワクチンが、免疫暴走を招くという皮肉な結果となるのだ。もちろん暴走の程度が低ければ大した問題とはならない。だが、博打であることは変わらない。免疫系がスパイクたんぱくだけを正確に選別して異物と見なすとは限らない以上、どうなるかはワクチンを体内に入れてみないことにはわからないのだ。

 

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普通のイボイボまで抗原と見なすようになる

 

3.軽い人も重い人も免疫暴走は起きている

 ここまで読んでいただいた方は、第百三回ブログで紹介した不可思議な大出血についても、その構造が見えてくるであろう。アストラゼネカ製のワクチンを接種したデーブ・ミアーズさんは、数時間後に高熱に苦しむようになり、一カ月後には足が腫れるようになった。結局、足から血が噴き出し、切断に至ったわけであるが、原因不明とされるこの症状は、明らかに免疫暴走の結果であるように見える。

 

アストラ製ワクチン打った元テコンドー世界チャンピオン、足を切断「腫れて血が噴き出た」

  

 「副反応」という言葉を多用し、頭痛や発熱などの各現象を強調するというやり方は、ワクチンの負の側面が一時的な嵐のようなものだという印象を与えるものである。台風を一時的に我慢すれば、その後に幸せな生活が待っているかのようである。

 これは表面的な現象に目を向けさせることによって、肝心の内部メカニズムを隠すというやり方である。枝葉末節に注目させることで、根の部分は隠すのである。だが、隠そうが隠さなかろうが、ワクチンが注入された体内では、免疫攻撃が起きているはずだ。腕の痛みや発熱、吐き気や倦怠感といった現象は、免疫系が細胞を攻撃するから起こるのだろう。

 我々は副反応の軽重を気にする。ワクチンを打った後に副反応が軽いことを祈る。だが、スパイクたんぱくの大量発生を契機として、自分が自分を攻撃するという事実は起きる。この程度が低ければ、ちょっとした痛みや発熱で済むだろう。だが程度が大きければ、数時間で死亡した神戸の女性や、脳出血をした26歳の看護師や、足を切断した元テコンドー選手のようになるかもしれない。

 新型コロナウイルスに感染しても、ほとんどが局所的なウイルスの増加にとどまる。ACE2という受容体を持つ細胞にしかSARS2ウイルスは侵入できないのだから、炎症も体の部分で起きるしかない。だがワクチンは全身にまわる。どこで免疫暴走が起きるかは、ワクチンを打ってみなければわからない。

 それゆえ、ワクチン接種の制度は完全に自己責任となっている。何が起きても製薬会社は責任をとらない。実際、緊急事態下の限られた実験期間を経て特例承認されたものであるから、打った結果どうなるかは誰にもわからないのだ。接種拡大の今が、実験期間である。

 結局、新型コロナウイルスについて調べれば調べるほど、その恐ろしさは軽減していき、逆に、ワクチンについて調べれば調べるほど、その恐ろしさは増してゆく。これは私だけでなく、ウイルスやワクチンについて調査した人なら、誰もが同じように経験することであろう。

 これは、マスコミ情報を鵜呑みにする世間の常識とはまったく逆の進行形態である。大手マスコミの情報をシャワーのように浴びれば、新型コロナウイルスがどんどん恐ろしくなり、ワクチンは恐くないものとなってゆく。これは明らかに、その方向に誘導されているということである。

 となると、我々はウイルスやワクチンによって死ぬというよりも、その誘導によって殺される可能性があるということである。結局コロナやワクチンよりも、人間の意図の方が恐ろしいということになるのだろう。

 

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ルワンダのスーパーで売られているマチェーテ

 刃物はスーパーで売っている。それ自体は恐ろしいことではない。ルワンダのスーパーで売られているマチェーテが、勝手に飛んで来て人間を襲うことはない。警戒すべきは刃物それ自体ではない。むしろ、それを使って何かをしようとする人間の意図の方が危険であろう。次回はコロナウイルスを契機に起こる人間の攻撃性について考察していきたい。

 

第百七回 新型コロナワクチンと大出血(5)

1.ワクチンの奴隷

 前回のブログでは、「抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement 略してADE)」について取り上げた。ワクチンが目論見通りに働かず、むしろワクチンによって体内で形成された抗体が、免疫細胞等へのウイルスの感染を促進してしまうという現象である。

 北海道の医師であるシカハンターさんは、ADEについて次のように説明しており、大変興味深い。シカハンターさんは、ワクチンの接種によって不完全な抗体が体内に出来上がることを心配している。ワクチンを引き金としてウイルスに弱い体となり、さらなるワクチンが必要になる可能性がある。つまり泥沼である。

 

 ADE抗体依存性感染増強

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ADE抗体依存性感染増強 その2

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 シカハンターさんは、日本人が欧米人と比べて圧倒的にCOVID‐19において重症化率、死亡率が低い要因を、交差免疫とBCGワクチンにあるだろうと考えている。これとまったく同じ見解を述べている学者もおり、それが順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏である。

 

president.jp

 

  シカハンターさんのようなワクチン反対派の医師の主張は、明確である。すなわち、ワクチン(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)は十分な治験を経ずに見切り発車で世に出ているものであり、体内で抗体を作成しても、その抗体が不完全である可能性があり、ADEのリスクがある。また、日本人はBCGと交差免疫により、COVID‐19の重症化リスクは低いのであるから、一部の高齢者を除けば日本人が急いでワクチンを接種する理由はない。

 要は、日本人は新型コロナウイルスを過剰に恐れる必要はなく、皆がワクチンを打つ必要もなく、普段の生活において自然治癒のための免疫力を高めていけばいいという話である。このような簡潔でわかりやすい話が、なぜTVや新聞では言われないのだろうか。

 理由は簡単であろう。自然治癒は儲からない。ワクチンという巨大利権の巨大な胃袋は、自然治癒で満たされることはない。というのも利権の側からすれば、病気が自然治癒することは望ましいことではないからだ。

 ワクチンを打っても半年しか持たない、変異株には効かない、体内で抗体ができても不完全である・・・といった結果は、利権の構造からすれば大変に歓迎すべきことである。その問題を解決するための更なるワクチンが必要であれば、巨大な胃袋に次から次へと金が注ぎ込まれるからである。

 新型コロナウイルスや新型ワクチン、そういったキャラクターは、我々の歴史の舞台では新しいものである。我々は見たことのない顔を見て驚き、生活が一変する。だが、舞台上のキャラクターが新しくても、その土台となる舞台装置はまったく新しいものではない。むしろ、何回も使われてきた古い装置である。

 それは、我々を依存させ、奴隷にして儲けるという仕組みである。かつて大英帝国は、中国人をアヘン漬けにすることで大儲けした。奴隷化に反逆した清朝は、アヘンの全面禁輸を決定、英国商人が保有するアヘンを没収し、処分した。これがきっかけとなり開戦、大英帝国が勝利し、南京条約により香港を手に入れた(アヘン戦争 1840-1842)。

 人間を依存させ、奴隷化して儲けるという手法は変わらないが、装置は進化している。今の舞台は戦争を必要としない。人々は自らの意思でアヘンを購入し、国家も売人と一心同体である。我々はワクチンを無料だと思い込むが、実は有料である。全ては税金によって支払われる。その舞台装置は19世紀のものと違い、あまりにも洗練されたシステムであるから、戦争が起こる余地すらないのである。

 

2.サイトカインストームとワクチンストーム

 誰もがウイルスを恐れ、マスコミもそれを煽る。だが、順天堂大学の小林弘幸教授は、新型コロナウイルスの毒性はインフルエンザウイルスよりも弱いと述べている。COVID‐19という病気において、最も恐ろしいものはウイルスの毒ではなく、サイトカインストーム(cytokine storm)である。

 

www.sankeibiz.jp

 

  サイトカイン(cytokine)とは、免疫を活性化させるためのタンパク質である。ウイルスに感染した細胞はサイトカインを放出し、免疫細胞を活性化させる。これにより、免疫細胞がウイルスに感染した細胞を攻撃する。ウイルスに感染した細胞はウイルスを次から次に製造する工場と化しているから、免疫細胞に食べてもらうことで工場が潰れる。こうしてCOVID‐19は治癒されていく。

 だが、何らかの要因によりサイトカインがストーム(嵐)のように放出されるようになると、免疫細胞が過剰に活性化し、正常細胞も攻撃してしまうようになる。例えば肺でサイトカインストームが起これば、肺の細胞が免疫細胞によって攻撃され、肺炎が重症化する。志村けんさんや岡江久美子さんもこれで亡くなったと推測されているが、はっきりしたことはわかっていない。

 

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サイトカインストームのメカニズム

 

 インフルエンザウイルスの場合には、その増殖力により体内で急激に増え、体はそれに対抗するために高熱を出す。熱によってウイルスを死滅させようとする体の反応であるが、体の弱い子どもや老人は高熱に耐えきれずに死んでしまう場合もある。年間死亡者数は1万人程度と言われている。

 

www.mhlw.go.jp

 

  他方、新型コロナウイルスの場合にはそこまでの急激な増殖力はない。そのため子どもや若者が重症化するリスクは低い。だが糖尿病などの既往症のある高齢者は、新型コロナウイルスによるサイトカインストームが起こり得る。

 となると、たとえ新型コロナウイルスも恐ろしいウイルスではないかという意見が出るかもしれない。たとえ新型コロナウイルスの毒性がインフルエンザより弱かろうが、つまり急激に体内で増える力やそれに伴う高熱が起きる確率が低かろうが、サイトカインストームを誘発する力を持つならば、新型コロナウイルスを軽く見ることは危険ではないかと。

 確かに、新型コロナウイルスがインフルエンザと違った力を持ち、それが人体にとって危険性を有するなら、「コロナはただの風邪」として軽視すべきではないだろう。だが、新型コロナウイルスはインフルエンザと違い、幅広い年代で重症化するものではない。

 サイトカインストームに注意すべき年代は高齢者であり、しかも既往症のある人々である。そうした事実を注視せず、12歳以上の子どもにまで接種するという体制が整いつつある。子どもたちはサイトカインストームよりもワクチンストームの方に注意を払うべきかもしれない。

 

www.nikkei.com

 

 3.未承認VS特例承認

 マスコミの洗脳により、我々の脳は「ウイルスが恐い」と思うように仕立てられている。だが、このウイルスについて学べば学ぶほど、ウイルスおよびワクチンから引き起こされる「免疫暴走」のシステムが見えてくる。新型コロナウイルス(正式にはSARSコロナウイルス2 Severe acute respiratory syndorome coronavirus 2)およびそれに基づく疾病COVID‐19(coronavirus disease 2019)のキー概念は、明らかに「免疫暴走」であろう。

 ならば、「免疫暴走」に対処するための薬品を承認するために政府もより積極的になるべきであろう。新型コロナと言えば、一にも二にも感染予防とワクチンが叫ばれる。マスク、消毒、うがい、手洗い、3密を避け、外食せず、ソーシャル・ディスタンスを保ち、ワクチンを打つ。そういったことばかりが言われる世の中になったが、本来はもっと「免疫暴走」に目を向けられるべきであろう。

 そのための薬品や医療体制が整えば、入院患者の退院も早まり、医療崩壊も防ぐことができる。医療従事者の皆様に感謝の拍手をするばかりで、具体的な体制を整備しないのなら、拍手も虚しい音を出すだけである。だが、政府はそういったことについてはやる気がなく、例えばイベルメクチンの承認については消極的なようだ。

 

www.youtube.com

 

イベルメクチン 松原仁(衆議院議員 東京3区 Jin Matsubara) on Twitter

 

 イベルメクチンがCOVID‐19に対してどれだけの効力を持つかについては、確かに今後も検証が必要であろう。だが、恐らく政府は検証の意欲がないだろう。厚労省はイベルメクチンの承認に向けて力を注ぐより、未承認薬の服用を控えることを国民に啓発することの方に力を注いでいるようである。

 

www.jiji.com

 

  イベルメクチンの実際的な効果について、私はまだ勉強不足のためわからない。だが、政府がその承認に向けて「やる気」がない理由はよくわかる。イベルメクチンの特許は放棄されており、インドや中国で大量製造がなされている。つまり安価である。イベルメクチンは国際金融資本にとって、まったく魅力がない商品なのである。

 

ノーベル賞の大村智教授は、特許権の一部を放棄し、10億人を救っていた

 

 イベルメクチンがもし駄目だとしても、その改良型、あるいはその他の薬品がサイトカインストーム対策として有効かもしれない。だが、政府はそちらの方面で努力をすることはないだろう。むしろ、国民全体にワクチンを打つことに全力を注ぐであろう。一部高齢者のためのサイトカインストーム対策という限られた市場と違い、一億総ワクチンの方が遥かに市場として大きいからである。

 オリンピックが金のために強行されることと同じように、新型コロナ対策も金のために行われる。国民の健康や生命を尊重しても、政治家は選挙で勝てない。選挙で勝つためのキーポイントは金である。となれば、この国の主権者は国民ではなく、金(Money)である。

 新型コロナウイルスのキーポイントが「免疫暴走」であっても、政策のキーポイントは金(Money)であるから、今後も注目点はサイトカインストームではなくワクチンであろう。イベルメクチンについては「安易な服用控えて」と厚労省は啓発するが、ワクチンについては「安易な接種控えて」と言うはずがない。

 しかし、よく考えてみればワクチンも緊急事態下での特例承認であるから、正常手続における承認ではない。となれば、イベルメクチンと同じように、我々も安易なワクチン接種は控えるべきであろう。個人輸入も自己責任であるが、政府推奨のワクチンも自己責任である。誰も責任は取らない。当たり前のことだが、自分で考えて決断する以外ないのである。

 

第百六回 新型コロナワクチンと大出血(4)

1.説明書から読み取れる「わからなさ」

 新型コロナウイルス用ワクチン(正確にはコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)の接種が、我が国においても着々と進んでいる。2021年6月13日の時点では、医療従事者や高齢者への接種が優先されている状況であるが、今月中旬から一般接種もスタートすると政府は発表している。

 

answers.ten-navi.com

 

  問題は、誰もが気になる安全性である。この点、我々が抱く懸念事項の数々は、ワクチンに対する素人的な誤解に基づくものであると、第一線で活躍する医師や研究者たちが述べている。つまり、我々のワクチンに対する心配は取り越し苦労であるというわけである(詳しくは前回のブログ参照)。

 だが、ここには決定的な事実がある。確かに研究者たちは、我々の非科学的な愚問に対して科学的研究成果の立場から対応し、「それは誤解だ」とか「心配ない」というふうに答える。しかし、彼らは絶対に「安全だ」とは言わない。なぜなら、このワクチンを作った製薬会社が長期安定性については「わからない」とはっきり言っているからである。

 

go2senkyo.com

 

 

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コミナティ筋注 コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン

 

 「本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において長期安定性に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集中である。」

 

 説明書の文章をきちんと読めば、このワクチンがある種の博打であることは明確にわかる。このワクチンは特例承認されたものである。つまり、普通なら厚労省で承認されることはあり得ないということである。緊急事態であるゆえに、本来必要とされる治験等は省略して、特別に承認されたものである。

 だから「長期安定性」、つまり接種した人が将来どうなるのかについては、作り手である製薬会社にもわからない。情報がない。だから接種と同時進行で情報収集し、検討している最中である。つまり、会社としては責任が持てないということである。あくまでも自己責任なのだ。

 

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク

 

 「また、有害事象が認められた際には、必要に応じて予防接種法に基づく副反応疑い報告制度等に基づき報告すること。」

 

 普通、ワクチンの承認には5年程度はかかるものである。その間、治験等で有害事象を把握し、その後で承認という段取りとなっている。ところがこのワクチンの場合は順番が逆であり、特例承認を取ってから有害事象の報告と検討がなされることとなる。要は大規模な人体実験である。

 普通のプロセスなら、研究開発に莫大な費用がかかり、苦労の末にワクチンが完成してもその後の治験にまた金と時間が費やされる。売上として会社に収入が入るのはその後である。だから投資のリターンが返ってくるのは相当後の話だ。投資家は5~10年、あるいはそれ以上待たなければならない。

 ところが、今回のようなスピード承認なら、あっという間にリターンが投資家の手に入ってくる。治験費用も無料である。大規模人体実験の後、報告も無料で多数やって来る。大量データの取り込み費用がゼロというのは、会社としては大きな利益である。

 しかも、後々問題が起きた場合の損害賠償費用も無料である。これも普通ではありえない措置である。通常なら、訴訟リスクは会社が負う。それは安全性に疑問がある製品を市場に流通させた会社の責任である。ところが今回のワクチンは製薬会社にとってノーリスクである。

 

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  これは製薬会社にとって過去例を見ないほどに「おいしい」話である。コロナ禍は製薬会社と投資家にとって、普通ならあり得ない巨額の利益をもたらした。支払は全額我々の税金である。もちろん、多額の出費があっても、ワクチンの安全性が確立されているなら、まだいいだろう。だが、このワクチンが安全かどうかは、今はまだ誰にもわからない。

 

2.ADEについて口を閉ざす

 医師や研究者、つまりプロなら誰でも、この説明書を読んでいるはずである。だが、推進派のプロはこれについて言及しない。また、彼らは「抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement 略してADE)」についても言及しない。プロなら皆、ワクチン接種にはADEのリスクがあることは知っているはずである。

 今回のウイルスはSARSコロナウイルス2(Severe acute respiratory syndorome coronavirus 2)という名前のウイルスであるが、これと祖先を同じくするウイルスが2003年に中国で猛威を振るったSARSコロナウイルス(Severe acute respiratory syndorome coronavirus)である。

 このSARSウイルスについての動物実験においてADEが発生したと見られている。フェレットなどの哺乳動物にワクチンを投与した後、SARSウイルスに感染させた。理論的にはワクチンを打っている以上、動物の体内に抗体ができており、ウイルスに感染しても重症化しないはずである。

 ところが結果は逆であり、重症化した。これはワクチンによって体内に抗体ができなかったからではない。むしろ、できた抗体が免疫細胞等へのウイルスの感染を促進したためだと考えられている。ウイルスに感染した免疫細胞が暴走すると、本来なら細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫細胞が普通細胞を攻撃してしまうのだ。

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ウイルス研究用のフェレット 主に中国で生産されている

 

実験動物用フェレットのご提供について|日本クレア株式会社

 

 つまり、ワクチンによってできた抗体が逆説的に重症化を招くのである。ADEによって死亡したフェレットは、もしかしたらワクチンを打たなければ、SARSに感染しても死亡しなかったかもしれない。SARSに感染しても、必ずしも重症化するわけではない。免疫系が正常に働けば、自然治癒する可能性がある。だが、ADEによって免疫系が正常性を失えば、SARS感染が引き金となって免疫系は暴走する。

 大阪大学の宮坂先生は昨年の夏、性急に開発されたワクチンを国民が大量接種してしまえば、ADEのリスクを人体実験することになると述べている。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

  ADEのリスクは、どんなワクチンであろうが消すことはできない。現代の科学水準ではまだそのメカニズムの全貌が解明されていないからだ。だからワクチンの承認には普通5年はかかるのだ。もちろん、製薬会社や投資家からすれば、その5年はマイナスであり、巨大な出費である。

 だから、彼らからすれば先に販売と大量接種を済ませ、その後に経過観察をするというプロセスは最高であろう。本来なら自分たちの出費として行う治験を国民の税金によって成し遂げられるわけであるし、これだけの大量データ取得は普通の治験では不可能である。

 こうした巨大利権と一心同体である政府や大メディアは、ADEについて言及しない。そこに群がる御用学者たちも口を閉ざす。彼らは嘘は言わない。だが肝心なことは隠す。逆に、そうしたリスク、つまりまだ「わからない」ことについて明確に述べる学者は、推進派の学者よりも信頼できるだろう。「わからない」ことを「わからない」とはっきり述べることは、学者の良心であると言える。

 

www.fnn.jp

 

3.良心を忘れた御用学者がワンパターンで使う手法

 推進派の学者からすれば、素人の低レベルな質問に対して対抗することは容易である。例えば、「遺伝子ワクチンを接種したら我々の遺伝子は組み替えられてしまうのか?」とか、「急造ワクチンで大丈夫なのか?」とか、「アナフィラキシーショックが起こるのではないか?」といった質問である(詳しくは前回のブログ参照)。

 こうした質問、つまり素人が頭に思い浮かべやすい懸念事項については、既に推進派の方で回答が用意されている。彼らからすればそれを答えればいいのであるから、簡単である。国民のネガティブな反応を払拭したい大メディアからしても、マニュアル通りの質問と回答をニュース番組で流せばいいだけであるし、場合によっては推進派の医者や学者を出演させて喋らせればよいので簡単だ。

 つまり彼らからすれば、我々国民を「手懐ける」ことは極めて簡単なのである。民主主義国家では政府による思想統制言論統制憲法違反であるから、国家が国民を管理することは全体主義国家よりも難しいように見える。

 だが民主主義国家では国民を「手懐ける」ためのIntelligenceの蓄積がある。それを民間の学者やマスコミにアウトソーシングすればいい。民間がやるなら憲法違反ではない。これが憲法という法律の抜け穴であり、そこには様々な手練手管がある。

 その代表的な手法の一つが、国民にどうでもいい情報を大量に与え、肝心な情報を隠すという手法である。例えば、東大話法の達人である大橋先生である。先生は「原発説明会」という名前の洗脳会において、原発建設予定地の地元住民に対して、繰り返しこの手法を用いて洗脳をした。

 それが有名な「プルトニウムは飲んでも平気」という話である。先生は高名な学者であるから嘘をついて住民を騙すわけにはいかない。そのため嘘で騙すのではなく、「事実で騙す」のである。実際、プルトニウムは胃腸で吸収されないので、先生の言う「飲んでも平気」は嘘ではない。事実である。

 だが、これによって住民たちはプルトニウム、およびそれを製造する原発に対して安心感を持ってしまう。「飲んでも平気」という「どうでもいい情報」を餌として撒き散らすことによって、肝心な情報は隠す。

 確かにプルトニウムを水に薄めて飲んでも健康被害は生じないであろう。だが、微量でも鼻や口から肺に入れば、高確率で肺癌を発症する。そのことは大橋先生もよくご存知のはずであるが言及しないのだ。

 

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原発説明会での東京大学大橋弘忠教授(現在は名誉教授)

 

www.mynewsjapan.com

 

 

gendai.ismedia.jp

 

  これは今回のワクチン騒動でも全く同じである。様々な科学的情報が国民に与えられる。例えばワクチンのmRNAは細胞内に入っても一週間程度で消滅するから心配はないという話である。これは科学的に嘘ではないだろう。だが、そういった「重要でない懸念事項」に対する回答で安心感を持ってしまうなら、彼らの思う壺である。彼らは「重要な懸念事項」つまり肝心なことについては口を閉ざす。例えばADEについて言わない。

 実際には、最先端の科学においてもウイルスやワクチンについて「わからない」ことは多い。そうした「わからない」ことについて口を閉ざし、「わかった」ことについてだけペラペラと流暢に話しながら国民を安心させようとする学者については注意が必要である。何か肝心なことを隠そうとしているかもしれないからである。

 

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重要事項が隠蔽される仕組み

 我々は中国や北朝鮮のような情報統制国家の住民ではない。だが、情報は統制されている。それは高度、巧妙、洗練な形で統制されており、ある意味、全体主義国家よりも遥かに厄介である。全体主義国家であれば、ウイルスやワクチンについて国民には何も知らされないであろう。そういう国の住民は、家族がコロナウイルスで死亡しても、風邪が悪化して死んだのだと解釈するかもしれない。

 これに対して自由主義国家では、日々、情報が大量に撒き散らされる。そこでは国民の誰もが評論家であり、コメンテーターである。国民の一人一人が保有する情報量は、全体主義国家の国民とは比較にならない。だが、自由主義国家の住民が頭に入れている情報は、全て金融資本家にとって都合のいいものかもしれない。自由主義国家の住民は、「知らない」ことによって飼い慣らされるのではなく、「知る」ことによって飼い慣らされるのだ。

 結局、このトリックは原発であろうがワクチンであろうが、同じように使われる。なぜ同じ手法が飽きもせず使われるのか。それは我々国民が同じやり方で騙され続けているからである。同じ手法で結果が得られるなら、あえて変える必要はない。だから相も変らぬワンパターンが続くのである。

 我々は原発事故の際には放射能について心配し、コロナ禍においては感染やワクチンについて心配する。しかし、本当に問題なのは放射能やウイルスよりも、何度も同じやり方で騙される我々の思考パターンの方である。これがわからなければ、危機が去った後もまた同じ手法でやられてしまうだろう。

 それゆえ、今回のワクチン騒動も我々にとっては貴重な教訓になりうると思われる。我々にとって本当に必要な学者は、「大丈夫だ!」と言って我々を安心させる学者ではなかろう。科学の未熟さ、人間の知性の未熟さを素直に認め、「わからない」ものについては「わからない」と正直に述べる学者こそ、我々が本当に必要としている学者ではないか。

 我々は「わかる」ことを誇る学者よりも、「わからない」と言って頭を垂れる学者の方を尊敬すべきではないだろうか。我々が科学という学問によって自然界に対峙する理由は、自然界を解明し、消費し尽くすためではないだろう。

 科学研究が進歩すればするほど、最終的には人間のそれまでの知性では対処できない本当の神秘の姿が現れ出る。それは現代の量子力学の研究を見ても明らかである。我々は解明のために学問を行うのではない。解明は目的ではなく、手段に過ぎない。解明を重ねれば重ねるほど、対象は謎の姿を現す。その謎に直面する体験が、本当の学問体験であるはずだ。

 そうした「知ること」の原点に立ち返ることが、我々には求められている。今回の危機が過ぎ去っても、将来、我々はまた新たな危機に直面するだろう。その時に求められることは、耳に心地いいことを言う学者に騙されることではない。我々の一人一人が学問の原初的態度を思い出し、「わからない」ということの重要性に立ち返ることが求められている。